常時液晶オンは素晴らしいけど、その分見えづらいってトレードオフが…。
カーナビなどで知られるGarminが、これまでとはちょっと違うタイプのスマートウォッチを発売しました。新スマートウォッチ「MARQ」シリーズは日本価格が最低21万円という強気の設定で、大人のラグジュアリー時計の再現を目指しています。チタン素材とかデザインのディテールとかはたしかに本物感あったようですが、思わぬ落とし穴が…。米GizmodoのAndrew Liszewski記者が「MARQ Athlete」をレビューしていますので、どうぞ!
スマートウォッチって、機能的に優秀なものは数万円で十分手に入りますが、見た目にすごくこだわり始めると話は別になってきます。見た目にこだわったスマートウォッチとしては、ラグジュアリー時計ブランド・TAG HeuerのConnectedとかがありますが、このたびGarminも新スマートウォッチ・MARQシリーズでそのカテゴリに参戦してきました。ただ、1500〜2000ドル(日本価格21〜33万円)というお値段のわりには、ディスプレイが残念すぎるんです。
Garmin MARQ Athlete Smartwatch
これは何?:デザインにこだわったプレミアムなスマートウォッチ
価格:1500ドル(日本価格21万円)
好きなところ:戦車みたいな頑丈さと、万全の機能性
好きじゃないところ:常時オンのディスプレイが見づらいこと
ツールウォッチを再現
MARQのデザインは、TAG HeuerとかBreitlingといったブランドのいわゆる「ツールウォッチ」を再現しようとしています。ツールウォッチとは、たとえば海に潜るためのダイバーズウォッチみたいに、特定のスポーツとかタスクに特化した機能を備えた時計です。だから、部外者には何に使うんだかわからない刻みがベゼルに入ってたり、文字盤の中にさらに小さな文字盤みたいなものが詰め込まれてたりするんですね。
なのでMARQにもいくつか目的/デザイン別にバージョンがあり、Aviator、Driver、Captain、Expedition、Athleteと名前が付いてます。今回レビューしたのは1500ドル(日本価格21万円)のMARQ Athleteで、MARQの中では一番お手頃ですが、だからって値段を下げるために妥協した感じはまったくしません。
Athleteと名乗るからには、MARQ Athleteはスポーツに特化しています。って、別にApple Watchだって見栄えもいいし十分じゃないの?と思われるかもしれません。
でも僕的には、Apple Watchが頼りないとまでは言いませんが、たとえばサイクリングとかカヤッキング、水泳といったやや激しい運動をするときには着けたくないなと感じてしまいます。他の人の着けてるApple Watchが、アクシデントがあったときに壊れるのを何回か見てきたからです。それと比べるとMARQ Athleteは、着けたままハリケーンの中にも突っ込んでいって自分だけ無傷で出てこられそうな頼もしさがあります。
プレミアム素材を惜しみなく使用
米空軍の戦闘機と同じチタン製のMARQ Athleteを装着すると、手首に戦車をくっつけているような感触です。スクリーンはサファイアガラスで、自転車で転んだって割れないどころか、傷ひとつだって付きそうにありません。DLCコーティングチタンのベゼルも同じように、戦車級の強度です。
ユーザーインターフェースである5つのボタンは、Apple Watchのボタンよりさらにしっかりしています。グラつきがまったくないし、押すと固めの、でも満足感のあるカチっという反応があります。ただ、リューズも回せるようになってるんですが、それをいじって遊ぶ以外にどんな使い道があるのかがわかりませんでした。
AthleteはMARQシリーズの中で一番手頃なので、ストラップは革とかじゃなくてシリコンラバーです。でも個人的にはラバーのストラップの方が好きだし、MARQ Athleteで使われてるシリコンは多分、トラックの牽引にも使えるくらい頑丈です。
Garmin独自OSだけど、必要な機能は全部あり
機能的には、MARQシリーズはこれまでGarminが他のウェアラブル製品向けに開発してきた最新のナビゲーション、フィットネス、活動トラッキングといった機能がほぼすべて入っています。MARQ Athleteは光学心拍計・パルスオキシメーターセンサー搭載で、ジム命!な人にとっても十分なはずです。
あとはたとえばチェストストラップ式の心拍計とか自転車のケイデンスセンサーといった、他のハードウェアともつなげられます。ソニーのGPSハードウェアでトラッキングすれば、バッテリーライフの節約になります。
これらのデータはモバイルアプリのGarmin Connectにもシンクでき、アプリ上で時系列の運動記録を見たりできます。スマホに接続すればスマホ上の通知をミラーリングしてくれるので、運動中にスマホをかばんに入れっぱなしでも大丈夫です。ただ、Apple WatchとかWearOSのスマートウォッチとは違って、通知に対して返信などのアクションはできません。
MARQのOSやUIは独自のものなので、Garminの他のウェアラブル製品を知っている人でない限り、アプリとかメニューの探し方とか、見た目や機能のカスタマイズの仕方を覚えるまでには多少時間がかかります。Apple Watchもそうですが、せっかく何らかのメニューを開いて設定をいじってるのにうっかり間違ったボタンを押してホーム画面に戻ってああああ…となることがよくあったので、カスタマイズはモバイルアプリ上でもできたほうがいいんじゃないかと思います。
でも全体的に、MARQ Athleteはスマートウォッチをオフィスでもジムでも着けたいフィットネス好きが求める条件をすべて備えているように思えます。ただ、ほぼすべての部分でプレミアム素材が使われているのに、唯一失敗だったのは、反射型液晶画面を採用したことです。
針すら見えない時計って
反射型液晶を選んだ理由は、わからなくもないです。ウェアラブルデバイスにおいて、スクリーンはもっとも電力消費の激しいパーツのひとつです。Apple Watchの画面は1日のほとんどの間真っ暗ですが、それでも明るい有機ELディスプレイをちょいちょい表示させているおかげで、バッテリーは1日でなくなってしまいます。
一方MARQ Athleteは画面が常時オンで、スクロールできる地図とかスタンドアローンでのGPSトラッキングといった機能がありながらも、1回の充電で1週間以上使えます。MARQ Athleteのフェイスはフィットネスに特化していて、心拍数とか消費カロリーといったデータを好きなだけチェックできます。そこまではいいんですが、反射型液晶の特性的に、ほぼどんな環境でも見えづらいのが大問題なんです。
反射型液晶は、直射日光の下でまっすぐ見れば、ちゃんと見えます。明るくくっきりとして、コントラストも素晴らしいです。でも日陰とか屋内に入った場合、または夜とか、明るい窓のそばにいるとき、はたまた自転車に乗っていたりして真上から見られない場合、MARQ Athleteの画面は色あせて、チラッと見たくらいじゃ何が表示されてるか読み取れなくなってしまいます。心拍数とかの細かい数字が見えないってレベルじゃなく、目立つはずの時計の針すらも見えづらくなります。あとは明るい光が当たったときも見えづらいです。
Apple WatchとMARQ Athlete両方を左右の手首に装着して何回かサイクリングして見ましたが、どんな環境にいても、Apple Watchの有機ELディスプレイのほうがMARQ Athleteの反射型液晶ディスプレイよりはるかに見やすかったです。Apple Watchは、明るい光が反射していてもデータがはっきり見えましたが、MARQ Athleteのほうはデータを見るために手をハンドルから離して見やすい角度に調節する必要があり、ガタガタする道では危なっかしい感じでした。
MARQ AthleteとTAG Heuerのスマートウォッチは同じ価格ですが、もし「スマートウォッチの機能は欲しいけど、もっと時計っぽくて、もっと丈夫なのがいい」って人がいたら、僕はMARQ Athleteを勧めると思います。ただこの画面の見えにくさだけが、買わない理由でもあり、残念な理由でもあります。それ以外は素晴らしい時計なので、これからどうにか有機ELディスプレイに切り替えてくれないものかと願うばかりです。
まとめ
・スマートウォッチの中ではだいぶ高価ですが、プレミアムな素材を使って造りもしっかりしてて、値段なりの価値があると思えます。
・運動好きにはマストなフィットネス/活動トラッキング機能は、睡眠トラッキングも含めてほぼすべて入っていて、Garmin Connectアプリでデータの分析も見られます。
・OSやUIはもうちょっと洗練されていてもいいかなと思います。ボタンが5つもあってそれぞれ機能が書いててあるわけでもないので、機能をカスタマイズしたり階層の深いメニューを開いてたりすると、混乱します。
・反射型液晶の見えにくさは、多くの人にとっては買わない理由になるレベルだと思います。常時オンなのは(机上では)良いんですが、電力消費を抑えるための反射型液晶で明るさもないので、結局は見やすさが犠牲になってしまってます。直射日光の下では良いのですが、それ以外の環境ではほぼつねに、チラ見したくらいじゃ読み取れません。内蔵のバックライトは、夜に画面を見るには便利ですが、それ以外で使うには暗すぎてあまり役に立ちません。
Source: Garmin