今年は2007年に米国で初代iPhoneが発売されてから、10年という節目を迎える。ソフトバンクが国内向けにiPhoneを発売したのが2008年のため、国内市場への影響は9年分という見方もできるが、それでもこの10年近い期間に、iPhoneが市場に与えたインパクトは計り知れなく大きい。当初はiPhoneに可能性を感じつつも「国内市場への普及はなかなか難しいのではないか」と考える向きも多かったが、今や国内市場の半数を占めるところまで浸透し、日本のユーザーに広く支持されている。
iPhone 8とiPhone 8 Plusのレビューでも触れたが、iPhoneがこれだけ市場に受け入れられてきた背景には、アップルがiPhoneに最新の技術をいち早く取り込みながら、ユーザーからのフィードバックにも積極的に応え、たゆまぬ進化を続けてきたことがある。本体のハードウェアで言えば、今や業界標準となったNano-SIM、多くのスマートフォンに搭載された指紋認証センサーのTouch IDなどをいち早く採用し、通信技術で言えば、LTEやキャリアアグリゲーションも積極的に推進してきた。その一方で、日本をはじめとした多くのユーザーから期待されていた防水防塵、日本市場にはなくてはならないとされたFeliCaを利用したApple Payなども取り込み、この9月に発売されたiPhone 8とiPhone 8 Plusではワイヤレス充電にも対応した。
こうした10年間の積み重ねこそがiPhoneの人気を支えている要素のひとつだろう。一般的には、10年間の積み重ねがあると、思い切った変革ができず、仕様的に縛られてしまう製品も多い。スマートフォンに限らず、コンシューマー製品にはどうしても避けられない道であり、この部分に苦しんだ結果、勢いを失ってしまった製品やサービスはいくつもある。
いよいよ販売が開始されるiPhone Xは、まさにこうした変革のために登場したモデルと言えるだろう。これまでiPhoneが積み重ねてきた10年をベースにしながら、その積み重ねの呪縛にとらわれることなく、今一度、スマートフォン、デジタルデバイスの進むべき道は何か、どんな形がユーザーに求められているか、どういうスタイルで利用するのかといったことを見つめ直し、まったく新たに創り出されたモデルとして仕上げられている。つまり、iPhone 8とiPhone 8 Plusがこれまでの10年を継承した正常進化の位置付けにあるモデルなのに対し、iPhone Xは次の10年の進化のために創り出された『次世代のiPhone』に位置付けられたモデルというわけだ。