窪田正孝主演のドラマ「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」が、2021年10月4日(月)放送スタートした。2019年4月期に放送され人気を集めた「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」の続編となる本作は、CTやMRIで病気を撮像する放射線技師たちが“視えない病”に立ち向かっていく物語。cinemas PLUSでは毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。
もくじ
・第1話ストーリー&レビュー・第2話ストーリー&レビュー・第3話ストーリー&レビュー・第4話ストーリー&レビュー・第5話ストーリー&レビュー・第6話ストーリー&レビュー・第7話ストーリー&レビュー・第8話ストーリー&レビュー・第9話ストーリー&レビュー・第10話ストーリー&レビュー・第11話ストーリー&レビュー・「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」作品情報
第1話ストーリー&レビュー
→「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」画像ギャラリーへ五十嵐唯織(窪田正孝)は、「写真には必ず真実が映る」と信じる診療放射線技師。アメリカで最も権威ある放射線科医・ピレス教授から才能を認められた唯織は、ずっと思いを寄せていた幼なじみの甘春杏(本田翼)が放射線科医として勤務する甘春総合病院に採用された。医師免許も持つ唯織は、その天才的な読影能力を発揮すると、新人放射線技師の広瀬裕乃(広瀬アリス)や、放射線技師長の小野寺俊夫(遠藤憲一)ら『ラジエーションハウス』の仲間たちと力を合わせ、数々の患者の命を救った。ピレス教授から、人工知能を使った読影補助ソフトの開発プロジェクトに誘われた唯織は、渡米を決意し、仲間たちに別れを告げた。杏は、そんな唯織に「あなたが手出しできないくらい優秀な放射線科医になってみせます。だから…必ず戻ってきてください」と約束する――。その約束から2年後。プロジェクトがひと段落した唯織は、日本に帰国し、甘春総合病院への復帰を望んでいた。だが、甘春総合病院は、院長だった大森渚(和久井映見)が研究目的で唯織と同じワシントン大学に移ると、後を引き継いだ新院長の灰島将人(髙嶋政宏)が病院の合理化を実施。放射線科医はいらないと言い出して、読影はすべて外部の『遠隔画像診断センター』に委託してしまう。それに伴い、ラジエーションハウスも規模を縮小され、黒羽たまき(山口紗弥加)、軒下吾郎(浜野謙太)、威能圭(丸山智己)、悠木倫(矢野聖人)は、甘春総合病院を辞めてそれぞれ別の病院などに転職していた。ある日、ヴァイオリニストの宝生真凛がリサイタル中に倒れるという事態が起きる。客席にいた灰島は、彼女を甘春総合病院へと救急搬送する。一方、ラジエーションハウスで田中福男(八嶋智人)らと働く裕乃は、最近様子がおかしかった小野寺が認知症予備軍と診断されたことを知り、たまきや軒下らに助けを求める。小野寺が今まで通りに仕事を続けていくためには周りのサポートが必要、と考えたからだった。しかし、たまきたちの反応は冷たく……。同じころ、唯織は、杏の父親でもある元院長の正一(佐戸井けん太)を訪ねていた。そこで唯織は、杏がすでに甘春総合病院にいないことを知る。そんな折、仕事を終えて帰路についた杏は、妊娠中の森迫由美(森カンナ)が腹痛に襲われ苦しそうにしているところに遭遇する。由美は、かつて唯織たちがその命を救った世界的な写真家・菊島亨(イッセー尾形)の娘だった。そこに唯織が現れ……。甘春総合病院・ラジエーションハウスチームが帰ってきた!甘春総合病院ではない場所で、新しい生活をスタートさせていたチームの面々。2年間海外留学をしていた五十嵐先生(演:窪田正孝)を筆頭に、たまき先生(演:山口紗弥加)、軒下先生(演:浜野謙太)、威能先生(演:丸山智己)が次々とラジエーションハウスに戻ってきた。前シリーズを観ていたファンにとっては、たまらない展開だろう。ちなみに、本田翼演じる甘春先生は、効率化の観点から読影専門の施設にいるようだ。第1話の中心となるのは、小野寺技師長(演:遠藤憲一)、前シリーズに登場した由美(演:森カンナ)、そしてバイオリニストの宝生(演:田中みな実)。記憶力の低下が目立ってきた小野寺技師長に対し、認知症の疑惑が持ち上がる。ともに仕事をしていた五十嵐先生の存在すら忘れてしまったり、今日が何月何日かすぐに言えなかったり、朝ごはんを食べたかどうか失念してしまったり……。戻ってきたばかりの五十嵐先生が小野寺技師長を検査したことで、認知症ではなく「ウェルニッケ脳症」であることが判明!アルコールの摂り過ぎ・偏った食生活などによって引き起こされることのある病気で、ビタミンB2を摂れば治るそうである。小野寺技師長が認知症になってしまい、早々にチームから外れる展開になるのかと思って、ヒヤヒヤした……!続けて、妊娠中の由美が骨髄浮腫であることが判明する。こちらは妊娠後期に発生することが多い病気だそう。技師でありながら医師免許を持つ五十嵐先生が執刀することになったが、ギリギリのところで甘春先生が担当することに。五十嵐先生と離れていた2年間、ただ読影ばかりしていたわけではなく、放射線科医として成長したのだと証明したいーーそんな甘春先生の気持ちが読み取れた。「あなたが手出しできないくらい、優秀な放射線科医になってみせます」2年前、そう約束したから。由美の手術は無事成功。「これで何度目ですかね、私たち家族が先生たちに救われたのは」としみじみしながら、産まれたばかりの子を見る由美の眼差しは、もう親のそれになっていた。かつて由美の父親も甘春総合病院で命を救われている。親子代々、この病院への信頼は受け継がれるだろう。最後に今話のキーとなるのは、バイオリニスト・宝生だ。舞台上で演奏中に突如倒れてしまった宝生。五十嵐先生は宝生の様子を見るにつけ、詳しい検査が必要だと進言する。しかし、甘春総合病院の新院長である灰島(演:髙嶋政宏)は「担当医は私だ!」と譲らない姿勢。なんとか押し切り、検査に踏み切るもーー判明した病名は「ワレンブルグ症候群」。進行中の脳梗塞だそう。第1話では解決ならず、行方は次回以降に持ち越された。ワレンブルグ症候群とは聞き慣れない病名だが、果たして天才放射線技師・五十嵐先生の手腕で見事に解決なるのだろうか?※この記事は「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」の各話を1つにまとめたものです。→元記事はこちら→目次へ戻る
第2話ストーリー&レビュー
→「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」画像ギャラリーへ唯織(窪田正孝)たちのもとへ、陸上大会中にてんかん発作を起こして転倒し、頭部を強打したという12歳の小学生のCT検査依頼が入る。その小学生・速川走太(長野蒼大)は、ともに陸上のオリンピック選手だった一郎(眞島秀和)と叶恵(入山法子)を両親に持ち、ひとつ下の妹・花恋(白鳥玉季)とともに数々の大会で優勝するなど、日本陸上界の未来を担う才能として注目されている選手だった。走太は、てんかんの治療中で、以前から甘春総合病院の脳外科に通院していた。走太のCT画像を読影した杏(本田翼)は、薬物療法が上手くいかなくなっているため、外科手術を選択する可能性に言及する。そこで唯織は、少しでも治療の選択肢を増やすために、詳しい検査をしてはどうかと提案するが……。同じころ、裕乃(広瀬アリス)は、庭木の手入れ中に転落したという患者・柳田哲平(きたろう)の検査を担当する。だが柳田は異常もないのに、いちいち大げさに騒ぎ立て、裕乃を困惑させる。「世の中には、どうしても治したくても、治せない人だっているのに…」。そんな世の中の不条理に憤りも覚える裕乃だったが……。以前から、てんかん治療のため甘春総合病院へ通っている小学生・走太(長野蒼大)。将来を期待されている陸上選手で、両親も妹も才能溢れる陸上一家だ。試合中にてんかんの症状が表れ、倒れて頭を打ったことで緊急搬送されてきた。てんかんを治すために投薬治療を続けてきたが、それが上手くいっていないのでは、と甘春(本田翼)。外科手術が必要だと五十嵐(窪田正孝)は請け合う。ちなみに、走太の父親・一郎を演じる眞島秀和は、木曜ドラマ「にじいろカルテ」で、若年性認知症を患う橙田雪乃(安達祐実)の夫・晴信を好演していたことが記憶に新しい。また、走太の妹・花恋役の白鳥玉季も、数々のドラマや映画で存在感を残す名子役だ。【関連記事】名子役「白鳥玉季」の魅力|「極主夫道」「凪のお暇」「永い言い訳」などで存在感検査の結果、走太のてんかん症状には、左足の運動野に根本的な原因があることが判明。手術してその部位を取り除けば、てんかんの症状はおさまるかもしれない。しかし、左足の機能を失い、走れないどころか歩けなくなる可能性もあるという……。走太の両親に相談したところ、いったん手術はしない方向で話がついた。五十嵐は走太の父親に対し「息子さんに選択肢を与えないままでいいのでしょうか」と手術を勧めるが、「歩けなくなるかもしれない手術を子どもに受けさせる親がどこにいますか」と突っぱねられる。投薬治療を続ける方向で、走太は退院してしまう。片や、裕乃(広瀬アリス)は、とある患者のことで頭を悩ませていた。庭木や草花の手入れをしていたところ高所から落ちてしまったという男性患者・柳田(きたろう)だ。やれ足にアザがあるだの、足がむくむだのと言って裕乃を呼び出す柳田。昔、飼育員をしていた頃に可愛がっていたチンパンジー・アカネに似ていると言って、裕乃に親近感を抱いているようだ。走太の病気は、治したくても治せない。走太と柳田の事情を比べ、世の中の不条理さを嘆く裕乃。「どうしても治したくったって、治せない人もいるのに」しかし、五十嵐の審美眼により、柳田も一歩間違えれば死んでしまう危険のある病気だったことがわかった。真実を知った裕乃は柳田に謝罪する。いくら厄介な患者でも、どれだけ毎日同じような患者がいるとしても、「どうせこうだろう」と決めつけて判断してしまうことの怖さを、改めて思い知った。走太のてんかん症状は、日に日に悪化している。五十嵐はどうしても、外科手術を含め、治療方法の再検討をしたいと言って聞かない。しかし、ラジエーションハウスの仲間たちは及び腰だ。相手は12歳の子どもで、両親から手術の話さえ聞かされていないのだ。自分たちにできることは限られている……と諦めモードになってしまうのも、仕方ないだろう。五十嵐の姿勢に感化された裕乃は、走太の両親の元へ直談判しに向かう。「彼自身、今、何を思っているのか。彼の声を聞いてみたいです」裕乃、甘春、五十嵐の働きかけにより、走太の両親は手術の話を息子へ打ち明けることを決意。「どうしたいのか、走太くんが自分で決めていいと思う」五十嵐はいつだって、相手がどんな人間であろうと対等に向き合う人だ。子どもであろうと、大人であろうと、意思を持ったひとりの人間であることは変わらない。走太に対してだって、自分の行く末は自分で決める権利があると信じて疑わなかった。技術があるのはもちろんのこと、人間性が高いからこそ患者や仲間から信頼されるのだろう。無事に走太の件は着地点を見つけられたものの、五十嵐個人の元には、波乱が訪れようとしていた。なんと、甘春が辻村(鈴木伸之)と美術館デートに行ってしまったのだ(彼女本人が忘れていたせいで、美術館には入れなかったけれど)。事前に五十嵐へ宣言していた通り、辻村は甘春へ告白してしまう。どうする五十嵐、どうなる五十嵐!?恋の行方も見逃せない。※この記事は「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」の各話を1つにまとめたものです。→元記事はこちら→目次へ戻る
第3話ストーリー&レビュー
→「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」画像ギャラリーへ唯織(窪田正孝)は、辻村(鈴木伸之)が杏(本田翼)を美術館デートに誘ったと知り、動揺していた。唯織の前にやってきた辻村は、杏に思いを伝えたことを明かすと、「僕の方が一歩リードです」と告げる。同じ頃、軒下(浜野謙太)は、マッチングアプリで知り合った絶世の美女からデートの約束をすっぽかされて荒れていた。その日、軒下は、右足にギプスをはめた入院患者・荒井和真のレントゲン検査をする。その際、和真に付き添っていた幼なじみの宮本すみれ(堀田真由)が、軒下のIDを見て、声をかけてきた。軒下とのデートをすっぽかした絶世の美女とは、すみれだったのだ。すみれは、和真がスケートボードの練習中に転倒してケガをしたと聞き、病院まで付き添ったせいでデートに行けなかったことを軒下にわびると、「早くお会いしたいと思っていた」と偶然の出会いを喜んだ。事情を知り、すっかりご機嫌になる軒下。すみれは、「埋め合わせがしたい」と言って軒下をデートに誘う。そんな折、唯織は、すみれが和真と別の入院患者を見間違える場面に出くわす。するとそのとき、近くにいた外来患者の丸井耕吉(温水洋一)が激しくせき込んで倒れた。唯織たちは、ただちに丸井のレントゲン検査を行うが、喫煙歴50年という丸井の右下肺には腫瘤(しゅりゅう)影が見られ……。3話でフィーチャーされるのは、浜野謙太演じる軒下。マッチングアプリでパートナー探しに余念がない軒下は、今日も「デートの約束をすっぽかされた!」と荒れている。いつものように周囲からは軽くあしらわれてしまう彼だが、今回は運を味方につけたようだ。なんと、デートをすっぽかされてしまった相手の女性に、病院で再会できたのだ。五十嵐(窪田正孝)たちが勤める甘春総合病院へ、スケートボード中に怪我をしてしまったという男性・和真(萩原利久)が治療に来ていた。彼に付き添っていた幼馴染の女性・宮本すみれ(堀田真由)が、軒下がデートをするはずの相手だったのだ!堀田真由といえば、ドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(2019/日テレ)や「恋はつづくよどこまでも」(2020/TBS)にも出演していた。今クールは「言霊荘」(テレビ朝日)にも出演するなど、人気上昇中の若手役者である。堀田真由と萩原利久は、窪田正孝と朝ドラ「エール」(2020/NHK)で共演している。エール組の再会が実現した第3話となった。すみれは「一度あらためてデートを」と軒下を誘う。小学生の教師をしているが、もうひとつ別の夢がある、と語るすみれ。「幸せな結婚をするのが夢なんです」。その言葉自体はとても誠実に聞こえたが、何か裏があるように思えてしまった。軒下と話をした直後、手帳を取り出し何かを書きつけるすみれ。実は、すみれは「相貌失認」と呼ばれる病気だった。人の顔が識別できず、相手が笑っているか怒っているかもわからない。髪型やメガネやホクロの有無などの特徴を文字に残すことで、ようやく個人を認識しているのだ。脳の検査をすれば、相貌失認が治るかもしれないとすみれに伝える五十嵐。しかし、すみれは気が進まない様子だ。いざ検査をして、治療法のしようがないと判明してしまうことが怖い、と。軒下も軒下で、自分がどんな顔をしているかハッキリすみれに知れてしまったら、嫌われてしまうかも……と及び腰。軒下の態度を見て「すみれの病気のことよりも、自分がどう思われるかを優先しちゃうの?」と考えてしまったが、五十嵐をはじめ、ラジエーションハウスチームの後押しにより、軒下は考えを変える。「自分の症状と向き合うことで、改善する方法が見つかるかもしれない」とすみれを説得し、彼女は検査を受けることを決めた。検査の結果、すみれの相貌失認の原因は、良性の脳腫瘍だったことがわかる。脳実質との境界が明快であることから、手術で摘出すれば完治する可能性があるとのこと。軒下や、すみれの幼馴染である和真もホッとしただろうが、視聴者も全員、胸を撫で下ろしたことだろう。手術は無事に成功、すみれの相貌失認も完治した。あらためて和真の顔を見、「なんか、いかつくなったね」と言いながら泣き出す、すみれ。堀田真由は泣きの演技が美しい。見ているこちら側の感情をも動かす泣き方をする。五十嵐や軒下の顔も認識できるようになったすみれ。しかし、軒下は自分のことを「田中」と名乗り、そのまま連絡を取らずに終わらせる選択をしたようだ。和真がすみれに想いを寄せていることを知ったからかもしれないけれど、「彼女を幸せにできるのは、俺じゃないってことだ」と潔く諦め、あらためてマッチングアプリで相手を探すことにした様子。なんとも、たくましい人だ。それにしても、やはり五十嵐の”観察力”はすごい。どんな病気も、レッテルや先入観を介入させずに見つけ出す。プロの医師(技師)でも、レントゲンに映り込んだゴリラ形の影に気づかないことがあるという実験さえあるのだ。レッテルにとらわれず、まっさらな気持ちで、人や物事を見る自分で在りたいものだ。※この記事は「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」の各話を1つにまとめたものです。→元記事はこちら→目次へ戻る
第4話ストーリー&レビュー
→「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」画像ギャラリーへ唯織(窪田正孝)たちが働く、甘春総合病院のラジエーションハウスに、たまき(山口紗弥加)の母・るり子(中田喜子)が突然訪ねてくる。るり子は、いまだ独身のたまきを心配し、親同伴の見合いをセッティングしてくれるという結婚相談所のパンフレットを無理矢理たまきに手渡す。「誰とも結婚する気がない」と反発するたまきに、「いま結婚しないと、一生独身で孤独死まっしぐらだ!」と言い放つるり子。実は前夜、自宅マンションでぎっくり腰を起こし、他に頼る人がいなかったため、小野寺(遠藤憲一)に助けを求めたばかりのたまきだったが、唯織だけでなく、辻村(鈴木伸之)らにもたまきとの結婚を持ちかけるるり子にイライラを募らせる。そんな中、堀田成美(臼田あさ美)が夫の誠司(忍成修吾)に付き添われて救急搬送されてくる。弁護士の夫を持ち、ふたりの子宝に恵まれた成美は、パティシエの仕事を辞め、いまは育児に専念しているという。絵に描いたような幸せを手にしている美男美女夫婦をうらやましがる軒下(浜野謙太)や田中(八嶋智人)たち。腹痛を訴えていた成美のレントゲン写真を見た杏(本田翼)は、便秘だと判断。成美は人より腸が長いこともあり、便秘になりやすいのだという。それを聞いた唯織は、便秘の原因のひとつに大腸がんがあり、成美が40歳であることも考慮し、「一度きちんと大腸の検査をした方がいいのではないか」と杏に進言する。それを受け、杏は成美に検査を勧めるが……。今回第4話は、山口紗弥加演じる黒羽たまきのフィーチャー回!35年ローンを組んで独身の城(マンション)を築き上げた彼女。一人暮らしを謳歌しているたまきだが、室内で人生初のぎっくり腰をやってしまった。助けを求められる男性が小野寺技師長(遠藤憲一)しかいない現実に、絶望するたまき……。40歳で独身の娘を心配した、たまきの母・るり子(中田喜子)がタイミング良く登場。親同伴でマッチング相手を探してくれる結婚相談所の案内とともにやってきた。「40で独身なんて、この先、孤独死まっしぐらよ!」「女の幸せは、結婚してあたたかい家庭を持つことです」なんとか娘の結婚相手を見つけたい母・るり子。当のたまきは「独身上等!」とばかりに母の話を聞き入れない。「結婚なんて、孤独に耐えられない人間の逃げ道でしょ?」と、たまき節が炸裂する(筆者も32歳で独身生活を謳歌している身のため、この切れ味の良いセリフにはなかなか感じるものがあった……)。たまきとるり子を含めたラジエーションハウスチームの面々で、交流も兼ねて居酒屋で食事をすることに。その場でも母は「誰か、たまきと結婚してくれないかしら?」と娘の結婚相手探しに余念がなかった。「親不孝なのはわかってるの、でもしょうがないでしょ、こんな生き方しかできないんだから」と、たまき自身も複雑な思いを抱えているようだ。場の空気が静まりかけた、その時……なんと、母・るり子が突然倒れてしまう。少し前から肩から腕にかけて痛みや痺れを感じていたという、るり子。脳梗塞も考えられるため、甘春病院で念入りに検査を行ったが、大事には至らなかった。長年、家業であるミカン畑の作業を行ってきたことで、身体に負担がかかりすぎていたようだ。るり子は、たまきに言う。「私は、たまきの花嫁姿を見たいわけでも、孫の顔を見たいわけでもない。最近、体が思うように動かなくなってきて、急に心配になったの。もし、たまきがこんなふうになったら、いったい誰があなたを支えるんだろう、って」。たまきの父、るり子の夫は、3年前に亡くなっていた。「独りで生きるって、暇よ」。るり子の言葉は、実感を伴って、たまきの胸に届く。しかし、決して、たまきは”独り”ではないはず。ラジエーションハウスチームの面々がいて、彼女の力を必要とする場がある。小野寺技師長の言うように、「そういう場所がひとつでもあれば十分」ではないかと、筆者も思う。たまきが結婚のことで悩み、揺れていたその時、腸の異変を検査するために堀田夫妻(臼田あさみ・忍成修吾)が来院した。妻・堀田成美の腸の異変にも大事はなく、ただの便秘だと判明(病院でそれがわかるなんて、それはそれで恥ずかしい気もする……)。しかし、またもや五十嵐(窪田正孝)の進言により、大腸がんの可能性も考えられるため追加検査をすることになる。大腸がんの検査は、患者の身体に多くの負担を強いるものだ。2リットルもの下剤を服用して腸内にある便をすべて出し切ること、検査に丸一日の時間を要すること、お尻から内視鏡を入れなければならないこと……。成美は毎日、子どもふたりの育児に時間を割かなければならない。あるかどうかもわからない病気を見つけるための検査に、多くの時間はかけられないだろう。それに、医師にお尻を見られるのも抵抗がある……。彼女は、ギリギリまで検査を渋っていた。しかし、たまきの説得により、検査を受けることを決める。「私たちが検査で見るのは、堀田さんの腸です。それ以外の何物でもありません」作中でも触れられていたが、やたらと検査や入院をすすめて治療費を稼ぐ病院の存在については、私たち視聴者も想像したことがあるだろう。堀田の夫もその可能性を恐れていたが、五十嵐たちラジエーションハウスチームは自信を持って主張する。検査は、病気を見つけるためだけにあるものじゃない。検査をすることで病気がないとわかったら、自分も周りの人々も安心できる。「もしかしたら病気かもしれない」という根源的な不安を取り除くためにも、検査は存在するのだ、と。視聴者である私たちにとっても他人事ではないだろう。負担がかかる検査だからといって、先延ばしにしていたら命に関わる事態になるかもしれない。成美の場合は、身体への負担が少ない「CTコロノグラフィ」という検査(腸の3D画像を撮るもの)がされることになったが、負担の軽重は関係なく、なるべく検査は定期的に受けておきたいものだ。検査の結果、大腸がんである可能性も一切なく、綺麗な腸であることがわかって安心した成美。たまきに対し「自分の好きな仕事をバリバリやっている、あなたみたいになりたかった」と吐露する彼女だったが、たまき自身も、結婚して家庭を築いている成美を羨ましく思っていたのだ。「お互いに、ないものねだりなのかもしれませんね」そう言って笑い合うふたり。作中で五十嵐も口にしていたが、結婚したからといって100%安心できるとは限らない。パートナーとの不和、生活習慣の違いから起こるすれ違いなど、結婚をしたらしたで心配事は尽きないはず。結局、人生はないものねだり。40歳で独身でも、自分のやりたい仕事をして、仲間や患者にも必要とされている娘の姿を見て、母・るり子もようやく安心できたようだ。結婚するか、しないか。これは、いわば「生き方の選択肢」でしかない。選択次第で人の幸せ云々が左右されてしまうなんて、なんとも簡単な世界じゃないか。私たちが生きているのは、もう少し複雑で、だからこそ”面白い”世界のはず。ラジエーションハウスチームが見せてくれる面白い世界を、次回も楽しみにしたい。※この記事は「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」の各話を1つにまとめたものです。→元記事はこちら→目次へ戻る--{第5話ストーリー&レビュー}--
第5話ストーリー&レビュー
唯織(窪田正孝)たち、ラジエーションハウス共用の冷蔵庫が故障した。ちょうど病院では、経営陣に新たな医療機器や備品の購入許可を求める『備品選定委員会』が開催されていた。技師長の小野寺(遠藤憲一)は、そこで冷蔵庫を申請するが、院長の灰島(髙嶋政宏)から、「それ相応の成果を出してからにしろ」と言われ取り合ってもらえない。そんな折、灰島から呼び出しを受けた小野寺は、人件費削減のため、技師の中から早期退職者を1人選ぶよう命じられる。だが小野寺はそれを拒否。他のことならどんなことでもやるので考え直してほしいと訴えた。すると灰島は、セレブをターゲットに、高いサービスを提供するプレミアム人間ドックの導入を指示する。その話を受けた小野寺は、早期退職者を選べと言われた話を伏せ、プレミアム人間ドックを運営する『帝光クリニック』の見学をラジハの面々に提案する。一泊二日で温泉付き高級旅館に行ける、と聞いて同行を希望する技師たち。すると、杏(本田翼)も見学に行きたいと願い出る。クジ引きの結果、唯織、杏、裕乃(広瀬アリス)、田中(八嶋智人)、そして小野寺の5名が帝光クリニックへ行くことに。プレミアム人間ドックの至れり尽くせりのサービスに満足する5名。そんな中、あるトラブルが発生。今後のラジエーションハウスの方針について、「金がないとやっていけない」とお金に執着する技師長・小野寺の心変わりに、違和感を覚えた唯織たちは……。第5話のテーマは「経費節減」か「人の命」か?甘春病院で年に1回行われる備品選定委員会。必要な医療機器などを上層部に申請し、受理されれば購入してもらえる会議だ。ラジエーションハウスで15年間も稼働していた冷蔵庫が壊れてしまい、ここぞとばかりに申請するも……小野寺技師長(遠藤憲一)のボロボロなプレゼンにより、申請が却下されてしまう。あろうことか、灰島院長(髙嶋政宏)にはラジエーションハウスを「金食い虫」扱いされ、人件費を削るために早期退職者をひとり挙げろとまで言われてしまい……。紙コップやペーパータオルなどの節約を提案するも、焼石に水だと突っぱねられてしまう始末。小野寺技師長、さぞ胃が痛くなる思いだろう……。チームを誰ひとりとして辞めさせたくない彼は、他のみんなにはそのことを明かさずに、灰島院長の提案を泣く泣く飲むことにする。そう、「高級人間ドックの導入」だ。少しでも売り上げを立てるため、単価の高い人間ドックを甘春病院にも導入するよう命じられた小野寺技師長。そのため、すでに高級人間ドックを実施している「帝光クリニック」へ見学に行くことに。設備も最先端、温泉もついている高級人間ドック。お金さえあればこういう環境で人間ドックを受けてみたい……と筆者は思ってしまった。しかし、温泉で体調が悪くなってしまった男性の処置を「(お金を払っている)人間ドックのお客様を優先する」として別病院に回してしまった対応を見て、意見が変わった。効率重視、経費節減……。世の中は金だけで回ってるのだろうか?人命も、お金で左右されるのだろうか?病院として本末転倒ではないか。視聴者全員がそう感じたことだろう。広瀬(広瀬アリス)や五十嵐(窪田正孝)も例外ではなかった。「ひとりひとりに合わせた検査を行うのが、僕たちラジエーションハウスチームですよね」ラジエーションハウスから早期退職者を出さないため、灰島院長からの要望を泣く泣く受けていた小野寺技師長。チームからの誤解も解け、本来の「病院の在り方」を再認識した仲間たち。団結に亀裂が入りかけた5話だったけれど、この一件をともに乗り越えたおかげで、より一体感が増したのではないだろうか。患者の立場からこのドラマを見ていると、こんなに懸命に尽くしてくれる病院で診てもらいたいものだ……とつくづく思う。さて、今回は五十嵐+甘春先生(本田翼)の恋模様には、あまり動きが見られなかった。次回以降、恋愛面もぐぐっと変化が起きるのだろうか?その辺りも楽しみに、次回を待ちたい。※この記事は「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」の各話を1つにまとめたものです。→元記事はこちら→目次へ戻る
第6話ストーリー&レビュー
辻村先生(鈴木伸之)が医療過誤(医療ミス)を起こしたとして、自宅謹慎になってしまう第6話。半年ほど前に甘春病院の外来へ通院していた患者・曽根の「骨粗しょう症」を見逃したとして、弁護士の武藤健(片寄涼太)がラジエーションハウスを訪ねる。可愛らしいルックスをしていながら、なかなか曲者な弁護士である。辻村先生が、曽根の骨粗しょう症の傾向を見逃したとして、損害賠償3000万を要求してきた。それが、曽根や家族の希望だといって聞かない。辻村先生の危機的状況を救うべく、立ち上がったのがラジエーションハウスチーム!約2000枚のデータから、過去に検査した曽根の造影CTを探し出し、「デュアルエナジー」で撮影されたものだと突き止めた。五十嵐(窪田正孝)の説明によると、ふたつのエネルギーを使って撮影された造影CTだという。このデータから、当時の曽根のカルシウム密度は成人男性レベルだと判明した。それはそれで、70歳の曽根さん、凄い……!曽根が骨粗しょう症であった可能性は限りなく薄い。再検査をした結果、曽根は「悪性リンパ腫」であることがわかった。隠れていた病気を、ラジエーションハウスチームが全力で見つけ出したのだ。医療過誤の疑惑がなくなり、無事に現場へ復帰した辻村先生。「もっと知識と経験を積みたい」と、人出が不足している救急科へ転科することに。忙しさにかまけて患者の様子を見逃していたのかも、と自宅謹慎中は意気消沈していた彼だが、向上心の高さは失われていなかったようだ。辻村先生を訴えていた武藤弁護士も、「最も自分が憎んでいた人たちと同じことをするところでした」と我に返っている。曽根や家族たちに再検査をするよう頭を下げたのも彼だ。前半30分は曲者弁護士としか思えなかったが、武藤弁護士にも良心があったということだろう。武藤弁護士が懸命に再検査を勧めてくれたおかげで、曽根の身体に隠れていた悪性リンパ腫を見つけられた。五十嵐の「おかげで、患者さんの病気を見つけられました」という言葉が、一層身に沁みる。辻村先生の窮地を救ったラジエーションハウスチーム。彼らの行動原則はいつだって、患者さんの病気を見つけ出すことにある。※この記事は「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」の各話を1つにまとめたものです。→元記事はこちら→目次へ戻る--{第7話ストーリー&レビュー}--
第7話ストーリー&レビュー
患者に愛想を振り撒くのは苦手、時短命でサプリ愛飲、同僚とランチをする時間があるなら技術を磨くために勉強する。ドライでロボットな技師・悠木(矢野聖人)のフィーチャー回である。サプリばかり飲んでいたせいで結石が溜まってしまい、腰に激痛を覚える悠木。膵臓がんの検査で甘春病院へ来ていた、杏(本田翼)の父親・正一(佐戸井けん太)のおかげで事なきを得た。しかし、一時的に技師から患者の立場になったことで、悠木の世界は一変したようである。26歳という若さで末期がんを患っている青年・今井陽一(戸塚純貴)が甘春病院へ入院。悠木と隣同士のベッドで、互いの状況を見知ることに。「余命いくばくもないから、生きてる間に行きたいラーメン屋行っとかないと」と話す今井に、何時間もラーメン屋に並ぶなんて……と懐疑的な悠木。「じゃあ悠木さん、その節約した1時間、何に使ったの?」「将来のための勉強に……」「偉いねえ。でも、その将来が来なかったら?」このシーンの悠木と今井のやりとり、グッときた。生きている私たちには常に2種類の時間が突きつけられている。「今この瞬間」と「来るかもしれない将来」。今井のように末期がん患者でもない限り、今日や明日にいきなり自分が死んでしまうことを想像するのは難しいだろう。だからこそ、何十年後も生きていることを想定して人生設計してしまうのが人間だ。しかし、確実にその将来が来る保証はない。だからといって今すぐに刹那的な生き方ができるわけではないけれど、今井のように、少しは「今を生きている自分」のために過ごすことも視野に入れたい。悠木が有給を取り、今井とラーメンを食べに行くラストシーン、とても良かった。時短命だった悠木が有給を取ることも、何時間も並んでラーメンを食べることも、彼のこれまでの人生でなかったことなのでは。自分の人生を生きていくため、信念を決めるのも大切なこと。しかし、経験や人との交流によって、考え方を柔軟に変えていくことも生きる上での醍醐味だろう。時間と命、両方の大切さについて考えるきっかけとなった回だ。※この記事は「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」の各話を1つにまとめたものです。→元記事はこちら→目次へ戻る
第8話ストーリー&レビュー
→「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」画像ギャラリーへ杏(本田翼)のインタビューが掲載された雑誌が発売された。放射線科医のやりがいについて話す杏の生き生きとした笑顔の写真に思わず夢中になる唯織(窪田正孝)。同じ頃、裕乃(広瀬アリス)は、鏡に映る自分の頭皮に10円玉大に毛が抜けている部分を発見し、激しいショックを受けていた。そんな裕乃のもとへ、高校時代の担任だった熊田太志(おかやまはじめ)がやってくる。学校で具合が悪くなった生徒に付き添って病院へやってきたという熊田は、そのついでに、裕乃に母校での講演会を依頼。進路に悩む後輩たちに、放射線技師の仕事について話してほしいというのだ。そこで唯織は、講演の参考になればと杏の記事が載っている雑誌を裕乃に手渡す。「恋に仕事に負けっぱなしだな」と軒下(浜野謙太)に言われ、劣等感が募る裕乃。ほどなく裕乃は、熊田が連れてきた女子高生・花倉乃愛(吉川愛)の検査を担当する。乃愛は、3ヵ月ほど前から急にふらつくようになったらしい。痩せてはいたが下腹だけがポッコリと出ている乃愛は、それを隠すように手で押さえていた。乃愛のMRI検査を見守っていた唯織は、検査室に入るなり「妊娠している可能性はないかな?」と乃愛に尋ねる。妊娠なんてあり得ないと乃愛が怒ると、今度は、乃愛の頭を見て、ウイッグなどは付けていないか、と言い出す唯織。実はウイッグを付けていた乃愛が仕方なくそれを外すと、なんと彼女の髪は白髪交じりのグレーヘアで……。なんだか身体がフラフラする、といった症状で甘春病院へ検査にやってきた乃愛(吉川愛)。彼女は無理なダイエットがたたって、高校生でありながら白髪や脱毛の症状に悩んでいた。お腹が出ていることも気に病んでおり、痩せなければならない強迫観念にかられている。小さい頃から抱いている「アイドルになりたい」夢を追うため、日々ダンスレッスンやオーディションに精を出す乃愛。ひとつ下の妹の方が可愛くアイドル向きだと思い込んでおり、自分と比べては落ち込むことを繰り返す。乃愛の症状をみて違和感をもった五十嵐(窪田正孝)は、「DEXA法」と呼ばれる、骨の密度を測る検査を行うことに。その結果、乃愛の骨密度は以上に低く、10代にも関わらず骨粗しょう症であることが判明。栄養失調が原因で、女性ホルモンも減っている状態だった。「すぐに死ぬ病気じゃないですよね、それよりも大事なことがあるんです」そう主張して、無理なダイエットを止めようとしない乃愛。何がなんでもオーディションに合格しなければならないと、余計にダンスレッスンにも力が入る。10代のうちに栄養を摂ることがどれだけ大事なことか、ラジエーションハウスチームは資料まで作って訴えるが……。乃愛には届かない。案の定、無理が響いて乃愛は倒れてしまう。更なる検査の結果、彼女は卵巣腫瘍をもっていることがわかった。脱毛の症状も、下腹部が出ているのも、腫瘍の影響だったのだ。手術は無事に成功。一連の出来事を通し、ようやく乃愛は「10代のうちに栄養を摂ることの大切さ」を痛感したようだ。自分と他人を比べる不毛さと、つらさ。それは、心の底から自分を疎み、他人を羨んだ人間にしかわからないかもしれない。乃愛の検査を担当した広瀬(広瀬アリス)も、五十嵐に思いを寄せるがゆえに、自分と甘春先生(本田翼)を比べてはストレスを溜め込んでいた。そのせいで10円ハゲまでこしらえてしまったほど。「隣の芝生は青く見える」というやつで、どうしても、自分より他人の方が優れていると思ってしまいがちだ。多感な10代の時期は特にそうだろう。しかし、あえて言いたい。自分は自分、人は人だ。割り切って「前向きに諦める」ことで、見えてくるものはたくさんある。広瀬の恋が実る可能性は低いかもしれないけれど、どうか、乃愛には何十年後も健康にダンスを続けてほしい。(文:シネマズ編集部)※この記事は「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」の各話を1つにまとめたものです。→元記事はこちら→目次へ戻る
第9話ストーリー&レビュー
→「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」画像ギャラリーへ「僕がずっと心から尊敬している医者は、甘春先生…あなたですから」。唯織(窪田正孝)から言われた言葉が頭から離れない杏(本田翼)。その唯織が研究チームの一員だったピレス教授の研究室のサイトを見ていた杏は、『留学生募集』の文字に目を止める。一方、田中(八嶋智人)は、最新の撮影技術を考案した、と言って脳外科医の渋谷(野間口徹)に自分を売り込んでいた。だが田中は、基礎が身についてないことを渋谷に指摘され、すっかり落ち込んでしまう。そんな田中に追い打ちをかけるかのように、別れた妻・幸子(猫背椿)から、再婚することになったというメールが届き……。ある日、ラジエーションハウスに、医療メーカーの営業マン・山田福造(石井正則)がやってくる。山田は造影剤の販売を担当しているが、十分在庫があるという理由から小野寺(遠藤憲一)に追い返されていた。帰ろうとしていた山田だったが、唯織に声をかけられる。唯織は、彼の左耳が聞こえにくくなっているのではないかと気づいて……。そんな折、田中は、ひょんなことから山田と知り合う。同じ“福”という字がある名前にも関わらず、不幸続きだという境遇も似ていることから意気投合するふたり。その際、山田は、実家で寿司職人をしている父親から跡を継いでほしいと言われていることを明かすと、冗談で一緒にやらないかと田中を誘う。元妻に再婚され、傷心の田中は、その話に食いつき…。「幸せ」って、なんだろう?誰しもが一度は考えたことがあるような、ありきたりな疑問について思考を巡らせる回だった。幸せとは、普遍的な定義がないものである。つまり、人によって幸せの形は違うということ。Aにとっては最上級の幸せでも、Bにとっては違うことは大いにあり得ることなのだ。今回フィーチャーされる田中福男(八嶋智人)の人生は、波乱万丈。本人いわく「捨てられっぱなしの人生」である。勤め先からはことごとくリストラされ、結婚して幸せを掴んだかと思いきや、妻にも捨てられ……。田中が病院内で必死に自分を売り込む様は、「周りに認めてもらって居場所を得たい」気持ちの表れではないかと、五十嵐(窪田正孝)は分析する。そんな捨てられっぱなしな田中福男が、医療品メーカーの営業担当・山田(石井正則)と出会う。造影剤などを売り歩く営業担当の山田、左耳の難聴を抱えつつも日々懸命に働いていた。ハードなノルマがある仕事で、年下の部下から叱られるストレスが難聴に繋がっているのでは……と見当をつける山田。しかし、持ち前の洞察力で「山田の難聴にはストレス以外の原因がある」と察知した五十嵐。山田に脳のMRI検査を勧める。一度の検査では原因がわからなかったものの……何と「あぶみ骨」と呼ばれる、耳の中にある小さな骨の骨折が難聴を引き起こしていることが分かった(体内で最も小さな骨とされているらしい)。「まさか、治るなんて!」と小躍りしながらはしゃぐ山田。田中や軒下(浜野謙太)も一緒になって喜ぶ様子が、なんとも可愛らしかった。「良い年した小さいおっさんが喜んでるぞ」という周りからのツッコミにも、ほっこりする。山田は、日々の大変な仕事に疲れを感じてはいたけれど、業務そのものには誇りを抱いていた。ただの営業担当といった冷めた視点ではなく、「自分が売り歩く医療品が患者の命を救っている」実感を得ながら、丁寧に仕事を進めていたのだ。そのおかげで、田中の元妻である幸子(猫背椿)の再婚相手(厚切りジェイソン)の検査も、滞りなく行えた。仕事に対する山田の姿勢と熱い思いを感じ取った田中は、今一度、自分にとっての仕事や幸せについて考えることになる。田中と同じく、自分の居場所を見つけられないがために、心を悩ませている人も多いかもしれない。しかし、そんな人だからこそ、すでに手にしている大事なものが見えにくくなっているのではないか。自分がいる場所こそが、最適な居場所である可能性はないだろうか。綺麗事に聞こえるかもしれないが、第9話を見ていて、田中の心の揺れ動きを想像していて、率直に思ったこと。「幸せの青い鳥」みたいに、目の前にあるものこそが、かけがえのないものなのかもしれない。そう意識しながら、日々に向き合っていきたいと感じさせてくれた。※この記事は「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」の各話を1つにまとめたものです。→元記事はこちら→目次へ戻る
第10話ストーリー&レビュー
→「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」画像ギャラリーへ「皆さんの力を借りる時が来ました」。唯織(窪田正孝)たちのもとを訪れた渚(和久井映見)は、胎児の心エコー画像を見せ、協力を求めた。この胎児は、「純型肺動脈閉鎖症」を起こして心臓から肺に血液が行かなくなっており、場合によっては生後もって数日の命だった。母親は、503号室に入院中の妊婦・池田しずく(伊藤歩)。しずくは、心臓カテーテルでの治療を望んでいるという。そのためには心臓を正確に把握できる画像が必要だというのだ。するとそこに、鏑木(浅野和之)が現れ、渚をこの患者の担当から外すと告げる。灰島(髙嶋政宏)の決定だった。灰島は、新生児への心臓カテーテル治療は前例がないと言って認めず、外科手術で対処するよう指示していた。裕乃(広瀬アリス)たちは、何故渚がカテーテル治療にこだわるのか疑問を抱く。実績のある外科的アプローチの方が無難な選択肢だからだ。そこで唯織は、循環器内科が専門の渚が、ワシントンに留学中、小児の心臓カテーテルについて学んでいたことに触れる。唯織が理由を尋ねても、渚は知見を広げたいとしか言わなかったらしい。そんな中、しずくのカルテに胎児の腹部エコー画像が追加される。それを見て何かに気づいた唯織は、渚のもとへ向かった。その途中、唯織は、郷田一平(工藤阿須加)という男から、眼科はどこかと尋ねられる。その際、一平は、唯織の顔を見つめると、どこかで会ったことはないかと言い出し……。大森(和久井映見)が執着していた患者・池田しずく(伊藤歩)の詳細が明らかになった回だった。しずくは妊娠しており、お腹の中の赤ちゃんは心臓に病気を抱えている。心臓に外科的手術が必要な状態だが、しずく本人は心臓カテーテル手術を希望。しかし、赤ちゃんの心臓の大きさはピンポン玉ほどの大きさのため、少しでも正確な心臓の写真が必要だった。ラジエーションハウスの面々に、赤ちゃんの検査を依頼しに来た大森。「患者の希望に応えるのが、医師の仕事です」と主張する通り、しずくの希望である心臓カテーテル手術のため準備を進めようとするが……「前例がない手術は認められない!」と灰島院長(高嶋政宏)の反対に遭う。しまいには、しずくの担当まで外されてしまう大森。実は彼女は過去にも、しずくの赤ちゃんの手術を担当していた。第一子も同じ「純型肺動脈閉鎖症」であり、治る確率の高い外科的アプローチが施されたが、結果的には合併症を引き起こし亡くなってしまう。過去の過ちを繰り返さないために、大森は海外で小児心臓カテーテル手術を学んだのだ。無常にも同じ病気を抱えてしまった第二子。「食道閉鎖症」まで併発してしまった赤ちゃんを救うため、なんとか心臓カテーテル手術を敢行できないか道を探し始める。万事休すかと思いきや、まさかの光明を見出したのは副院長・鏑木(浅野和之)だった。「結局、鏑木先生みたいな人が一番得をする」と陰口を叩かれるほど、長いものには巻かれろ精神を発揮していた彼。しかし、初めて灰島院長に反対意見を述べ、無事に心臓カテーテル手術を行う段取りをしてくれた。もちろん今回も、五十嵐(窪田正孝)のひらめきあってのことである。エコー検査をしながら手術をする大胆な提案をした彼は、見事、大森と二人三脚で華麗な成功を収めた。笑顔で帰っていく池田夫妻を見て、「これまでたくさん泣いた分、これからたくさん笑ってね」とエールを送る大森。早くに亡くなってしまった子の次に生まれた赤ちゃん=レインボーベビーの未来を暗示するような、良い笑顔だった。赤ちゃんの手術も成功し、万事が上手くいった……かと思いきや。甘春病院に、五十嵐の小学校時代の級友・一平(工藤阿須加)がやってくる。五十嵐の級友ということは、甘春(本田翼)とも同級生のはずだが……。甘春自身はそれを覚えていなかった。もしや、一番の重病患者は彼女だったのか……!?次回、最終回。五十嵐と甘春の関係は、進展するのか、しないのか。※この記事は「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」の各話を1つにまとめたものです。→元記事はこちら→目次へ戻る
第11話ストーリー&レビュー
→「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」画像ギャラリーへ唯織(窪田正孝)と杏(本田翼)は、小学校の同級生だった郷田一平(工藤阿須加)との再会を果たす。唯織との記憶を失っていた杏は、唯織が同じ小学校の同級生だったという一平の言葉で、過去の記憶を思い起こそうとする。杏の記憶がよみがえるかと思われたその時、一平は突然意識を失って倒れてしまう。頭部CT検査の結果、一平の左中大脳動脈に血栓閉塞が見つかる。その時、一平が甘春総合病院で眼科や皮膚科、消化器内科など、いくつもの科を受診していることが発覚。杏たちは、何か別の病気が隠れている可能性を考えて追加の検査を行うことに。軒下(浜野謙太)は、各科の担当医に、急患のためオーダーを受けていた検査が遅れることを説明し、頭を下げた。それに対し、脳外ばかり優先されている、と反発する医師たち。というのも、院長の灰島(髙嶋政宏)が今年度の収支データをもとに来年度の予算を決めると発表したためだった。一平の病室を訪れる唯織。そこで一平は、唯織の存在を忘れていた杏のことに触れる。杏は、転校する唯織を駅まで見送りに行った帰りに事故に遭い、そこで兄を失っていたのだ。「唯織はね、世界一のカメラマンになって、私のお手伝いをするの」。幼い頃に結んだ杏との約束。夢をかなえて今この場にいる喜びを分かち合いたい。しかし自分を思い出すということは、杏にとって記憶にふたをしたつらい思い出も一緒に思い出すことになる――唯織の選択は……。前回の終盤で急に倒れてしまった郷田一平(工藤阿須加)。眼科や皮膚科など、あらゆる科を網羅する勢いで診療に通っていた一平は、原因不明の疾患に悩まされていた。どこで検査をしてもハッキリした原因がわからず、各科をたらい回しにされ、挙げ句の果てに「できることがないから」と退院させられそうになる始末。ただでさえ体調不良に苦しんでいるのに、自分の存在を無下にされているのを知ったら人間不信に陥ってしまいそうである。元・同級生である甘春(本田翼)や五十嵐(窪田正孝)は、何とかして疾患の原因を突き止めようと努力するが、叶わず。病院の売上アップのため方針転換を図る灰島院長(髙嶋政宏)に邪魔され続ける。各科の医師を集め、それぞれの見解をまとめれば郷田を治療できる道が見つかりそうだ。灰島に逆らえず、売上のためピリついている医師たちを必死でまとめ上げ、合同カンファレンスを開くところまでは漕ぎつけたが……。「一人の患者に多くの時間を割くのは無駄」とする灰島の意向により、振り出しに戻ってしまう。しかし、全身疾患の原因が「代謝異常」にある可能性を突き止めたラジエーションハウスチームたち。「T1マッピング」という、心臓の中を色分けして映し出せる特殊な手法(血液は赤、心筋は緑で表される)を駆使したところ、代謝異常症=ファブリー病であることが判明した。一旦は郷田のことを諦めかけたラジエーションハウスチーム。特に甘春は、あまりにも為す術がない状況に心が折れていた。すんでのところで踏みとどまれたのは、幼い頃の「どんな病気も見つけられるお医者さんになりたい」といった夢を思い出させてくれる仲間が、身近にいたからだ。ファブリー病の治療は、決して簡単な過程ではない。X連鎖の遺伝性疾患であることから、郷田の娘に遺伝してしまう可能性もある。しかし、ギリギリまで渋っていた灰島も、甘春病院において「ファブリー病の診療チーム」を設立してくれた。彼だって、多くの患者を救いたい気持ちに嘘はないのである。五十嵐たちは、常に目の前の患者を救うことに全力を傾けている。それに対し、灰島は院長である自身の立場から、長期的な視点を持ち続けなければならない。短期的な視点と、長期的な視点。違いはあれど、たくさんの人の命を救いたい思いは共通している。無事に郷田の全身疾患を治療する道を見つけ出した彼ら。甘春は、より自身を磨くため、別の道を行くことにしたようだ。ワシントンへの留学。また、五十嵐と甘春は離れ離れになってしまうようだけれど、お互いの仕事を尊重し合える彼らなら、きっと本当の意味で思いが繋がる時がくるだろう。来年4月に公開予定の劇場版へと、物語は続いていく。そう、今こそ”人との繋がり”が必要な時代であり、私たちを動かすのはいつだって”熱意”である。また近いうちに、彼らの熱い思いを感じられるはずだ。次は、スクリーンを通して。(文:シネマズ編集部)※この記事は「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」の各話を1つにまとめたものです。→元記事はこちら→目次へ戻る
「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」作品情報
出演窪田正孝/本田翼/広瀬アリス/浜野謙太/丸山智己/矢野聖人/山口紗弥加/遠藤憲一/鈴木伸之/八嶋智人/髙嶋政宏/浅野和之/和久井映見原作『ラジエーションハウス』(原作:横幕智裕 漫画:モリタイシ GJ/集英社)脚本大北はるか音楽服部隆之主題歌MAN WITH A MISSION『Remember Me』 (ソニー・ミュージックレコーズ)企画中野利幸プロデュース草ヶ谷大輔演出鈴木雅之相沢秀幸水戸祐介制作著作フジテレビジョン
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