ITmedia Mobileは12月上旬、2016年を代表するスマートフォンを決定する「スマートフォン・オブ・ザ・イヤー2016」の審査会を開催しました。
選考対象となるスマホは2015年12月から2016年11月までに発売したもので、最終選考に残ったのは以下の10機種です(機種の発売日順に掲載、かっこ内はメーカー名)。
2016年の選考委員は、1年を通じて携帯電話業界を取材してきた石川温氏、石野純也氏、太田百合子氏、佐野正弘氏、島徹氏、すずまり氏、房野麻子氏、村元正剛氏、山根康宏氏、らいら氏(五十音順)の10人と、ITmedia Mobile編集部(2人で1人扱い)です。
審査に先立ち、選考委員がそれぞれ5機種ずつノミネート候補を挙げました。各委員が推薦した5機種は、以下の通りです。
選考委員(敬称略) | 機種名 |
---|---|
石川温 | iPhone 5s、ロボホン、HUAWEI P9、iPhone 7 Plus、Moto Z |
石野純也 | ロボホン、Galaxy S7 edge、honor 8、iPhone 7、Moto Z |
太田百合子 | NuAns NEO、Galaxy S7 edge、HUAWEI P9、iPhone 7 Plus、Moto Z |
佐野正弘 | Galaxy S7 edge、HUAWEI P9、arrows M03、ZenFone 3、iPhone 7 |
島徹 | iPhone SE、HUAWEI P9 lite、ZenFone 3、honor 8、isai Beat |
すずまり | ロボホン、Galaxy S7 edge、HUAWEI P9、iPhone 7 Plus、honor 8 |
房野麻子 | Galaxy S7 edge、HUAWEI P9、Qua phone PX、iPhone 7、Moto Z |
村元正剛 | Galaxy S7 edge、HUAWEI P9、arrows M03、iPhone 7 Plus、Xperia XZ |
山根康宏 | Galaxy S7 edge、HUAWEI P9、iPhone 7 Plus、ZenFone 3 Deluxe、Xperia XZ |
らいら | ロボホン、Galaxy S7 edge、HUAWEI P9、iPhone 7 Plus、isai Beat |
ITmedia Mobile編集部 | Galaxy S7 edge、HUAWEI P9、arrows M03、iPhone 7 Plus、Xperia XZ |
審査会では、出席できなかった山根氏を除く委員の皆さんに、2016年の携帯電話業界の動向を振り返りつつ、推薦した機種とその理由を語っていただきました。この記事では、太田百合子氏、すずまり氏、らいら氏と、ITmedia Mobile編集長の田中聡のコメントをご紹介します。
審査会の模様太田百合子氏太田氏 2016年はワクワクする製品が多く、当たり年だったと思います。そのなかでギミック的に面白いものを選んでみました。ただ皆さんが挙げられているロボホンは「これは電話じゃないな」という感じがしていて(笑)。コミュニケーションの新しい形としては面白いですし、シニアの方と家族をつなぐモノですけど、迷いつつ選びませんでした
今年はHuawei大躍進の年ですね。カスタマーセンターも日本にオープンしましたし、戦略的に端末を大量に出しました。MVNO市場の盛り上がりに合わせて一番印象に残ったメーカーだと思います。
HUAWEI P9はライカと組んだ驚きもありましたし、実際ライカのレンズに恥じない仕上がりです。モノクロモードの評価が高いですが、フィルムモードも良くて、色の落ち着き、感情に訴えかけてくるような写真が撮れる。若い人のあいだであらためて「チェキ」や「写ルンです」のようなインスタントカメラがはやったりと「フィルム帰り」みたいなものがある中で、P9の「フィルムモード」は若い人に響く写真が撮れます。よくぞ出したな、今年(2016年)はコレだろう、と思いました。
Galaxy S7 edgeは、やはりVRですね。IT業界的にもVRが盛り上がりましたし、その口火を切ったのは間違いなくGalaxyのGear VR。それに、撮影デバイスとして「Gear 360」もありましたよね。カメラの出来は物足りない部分もあるのですが「360度で撮影してVRで見る」という流れができて、Facebookも360度写真に対応し、エコシステムのようなものができました。これは、インパクトのある出来事だと思います。
サムスン電子の「Gear VR」。Galaxy S7 edgeの予約特典としてプレゼントされて話題となった(現在は新型の「Galaxy Gear VR」が販売されている)同じくインパクトが大きかったのは、iPhone 7 PlusでもSuicaが使えるようになったことです。iPhoneでSuicaが使えるようになったことで、電子決済のパラダイムシフトが起こる可能性があるのでは、と思っています。iPhoneは、日本ではシェアが大きいですから。そういう観点では、iPhoneのFeliCa対応はクレジットカード会社に大きなインパクトを与えているようですし、各種会員カードのポイントも影響を受けますよね。それくらいの経済的なインパクトがあったのでは、と思っています。iPhone 7ではなくiPhone 7 Plusにしたのは、皆さんと同じくデュアルカメラが理由です。
「NuAns NEO」は、私しか取り上げませんでしたが、Windows 10 Mobileが一時的に盛り上がったこともあって、搭載機種を必ず何か入れたい、と思っていたのです。NuAns NEOを選んだのは、今までスマホを開発していたわけではない、デバイスメーカーでもトリニティがスマホをつくった、ということが面白いし、いち早くUSB Type-Cを取り入れたり、背面側にICカードを入れるようにしたり、着せ替えのギミックがあったりと、初めてなのにいろいろなチャレンジしたからです。初参入だからこそ、なのかもしれませんが、その姿勢を買いたいです。
トリニティの「NuAns NEO」。同社にとって初めてのスマートフォンながら、Windows 10 Mobileの搭載、USB Type-C端子の採用、あえて別売としたケースなど、さまざまな面で注目を集めたMoto Zについては皆さんがおっしゃる通りです。スマホの機能をモジュールで拡張するのはアリかなと思っていて、それをきれいな形で実現したことを評価しました。「スマホ+α」という新しい形は「AIとの組み合わせ」が注目されていたけど、ハードウェアとしてモジュールとか合体といった形もあるのだと示してくれました。
すずまり氏すずまり氏 2015年は「Ingress」ばかりしていて、Ingressで一番使いやすい端末はどれか、という視点で選んでいましたが、2016年は完全にカメラを見て選びました。
最初にGalaxy S7 edgeのカメラが気に入りました。バーのような薄暗い所でもしっかり撮れて、ご飯もおいしそうに撮れるし、どこにいってもそつなく撮れるカメラです。プロモードの調整も細かくできるので「絵づくり」もできる。最初はプロモードを使った絵作りをしようと思っていたのですが、オートモードでもとてもきれいに撮れるので、どこに行っても、食べ物もオートにお任せで問題ありませんでした。とても感動したので「S7 edgeいいよ」って他の人にもお勧めしていたくらいです。
サムスン電子の「Galaxy S7 edge」は、特にアウトカメラの撮影品質の高さが評価された(写真は「Galaxy S7 edge SC-02H」)ですが、その後にhonor 8と出会いました。「デュアルレンズでワイドアパーチャ機能が使える」と発表会で聞いて、その場では「ふーん」という感じだったのですが、実際に使ってみるとインパクトが強かった。カメラも良いし、Huaweiのスマホらしくカメラを始めとする各種UIに癖がなくて使いやすい。アプリをインストールすればアイコンが追加されて、iPhoneチックで、動作もサクサク。何より、コストパフォーマンスがすごく良いのです。
……と思ったところに、HUAWEI P9が登場して、ライカレンズとフィルムモードに完全にやられました。久しぶりに「スナップ写真を撮りに外に行きたいな」と思った端末です。撮れば撮るほど好きになる。動作もサクサクですし、「嫌」という部分がない。「ワイドアパチャーで57mm相当の写真が撮りたいなぁ」とは思うのですが。「P9の後にどんなスマホを出してくるのだろう?」「私はこういう風に使いたいからぜひ次の機種をお願い!」っていう、久しぶりに良い意味で次の機種を待ちたいスマホですね。
あとGalaxy S7 edge、HUAWEI P9、honor 8の3機種はインカメラの美肌撮影にも力を入れているのです。その点でも外せないな、と思います。
iPhone 7 Plusはデュアルカメラとポートレートモードが付いたのを評価しています。本当は「iPhone 4s」あたりのカメラの表現が好きでしたけどね。P9にしっとりした雰囲気があるのに対して、今のiPhoneは乾いているというか、ノスタルジックな感じになってしまうのです。ただ、ポートレートモードはハマると良い画になる。晴れている日の屋外とかね。オールラウンドではないのが残念だけど。あとシャッター音をなんとかしてほしいですよね(一同 笑いつつもうなずく)。
(※編集注:「iOS 10.2」の適用で、シャッター音は 小さくなりました)
Appleの「iPhone 7 Plus」は、デュアルカメラとポートレートモードに対する評価が高かったロボホンはスマートフォンとして見るのは難しいけど、カメラ機能が楽しいんです。女性陣だけでカラオケに持っていったことがあるんです。その時に、パーティーモードにしておくとどんどん写真を撮ってくれた。それがすごく便利だったんです。ロボホンが名前とか顔を覚えてくれているから、あとで写真を見るのも楽しいし。どこで写真を撮った、とかね。コミュニケーションを含んだ“面白いカメラ”だなって思ったいました。私の友達にガチで購入して持っている人がいるのですけど、本当に持ち歩いている。だからハマる人には本当にハマる。固定電話として見ても、通知の読み上げ機能が便利なので、持ち出さなくてもいいのかな、と。かわいらしいし。
らいら氏とITmedia Mobile編集部の着眼点は……?1|2次のページへ