スマホ界のラグジュアリーSUV誕生:サムスンGalaxy Z Fold 3レビュー

huaweiwearabless 22/09/2022 590

パワーと柔軟性を兼ね備えたラグジュアリーなやつ。

Samsung(サムスン)の折りたたみスマホ第3世代、Galaxy Z Fold 3が発売されました。前作より若干下げた価格、IPX8の防水仕様などで、それなら買ってもいいかな…?と思う人も多いかもしれません。米GizmodoのSam Rutherford記者がしばし使ってみてのレビューをしていますので、以下どうぞ!


サムスン最大の折りたたみスマホは、3世代の長い道のりを経てきました。初代Galaxy Foldは折りたたみというまったく新しいカテゴリへの挑戦であり、でも粗削りな実験でもありました。その後デザイン的に洗練されたGalaxy Z Fold 2を経て、今回のGalaxy Z Fold 3(以下Z Fold 3)は日々のストレスを受け止めつつ、他のどんなスマホよりも多くの機能を提供できるようになりました。折りたたみなだけにちょっとかさばるし、1,800ドル(約19万8000円)という価格は安くはありません。それでもZ Fold 3は、サムスンの折りたたみスマホがついにメインストリームに進出する準備ができた、と思える仕上がりです。

スマホ界のSUV

スマホを車に例えるのはちょっとこそばゆいんですが、この例えはすごく当てはまる気がします。一般的なガラスディスプレイのスマホがセダンだとしたら、Z Fold 3はラグジュアリーSUVです。たたんだ状態の厚さが0.62インチ(約16mm)、重量9.5オンス(約271g)と、Z Fold 3は普通のスマホよりかなり大きく重いです。でも、フレキシブルな画面を開けばコンテンツに没頭でき、大きすぎるサイズ感を考慮しても余りある体験ができます。それはちょうど大きなSUVで3列目のシートを出して、キャパシティを広げられるのと似ています。今までなかった新たな空間が、そこに立ち現れてくるんです。

Samsung Galaxy Z Fold 3

これは何?:7.6インチフレキシブルディスプレイ搭載の大きな折りたたみスマホ。

価格:1,800ドル(約19万8000円、日本国内価格未発表)。

好きなところ:美しいフレキシブルディスプレイ、大きく改善された堅牢性、IPX8の耐水性、S Penをサポート、強力なバッテリーライフ、しっかりしたスペック。

好きじゃないところ:カメラのハードウェアが去年モデルと同じ、やたら高価、大きすぎる、マルチタスクサポートは要整理。

2021年のZ Fold 3ですが、全体的なデザインは初代Galaxy Foldから大きく変わりませんでした。つまり本体外側のカバースクリーンは細めの6.2インチで、通知やメッセージや地図を素早くチェックすることに使い、内側の大きくフレキシブルな7.6インチAMOLEDディスプレイがヒンジで開閉する、という作りです。側面には指紋センサーがあって楽にアンロックでき、下側面にはUSB-Cポート搭載。そして開いててもたたんでいても、ステレオスピーカーからは割とリッチな音が聴けます。

デザインは前とあまり変わらないものの、微調整はしっかりされています。エッジがオフスクエアで若干持ちやすくなり、ヒンジはより力強く、いろいろな画面の角度で保持しやすくなりました。遠目に見ると、Z Fold 3とZ Fold 2はほとんど見分けがつかないんですが、Z Fold 3の方が全体的に薄く小さくなり、閉じたときのディスプレイの隙間もより細くなりました。開いたときの画面の折り目はまだありますが、正面からだと見えにくいです。角度を変えながら凝視すれば折り目が見えますが、個人的にはもう折り目は意識から消えて見えなくなってます。これも車に例えれば、リアガラスの霜取り用の熱線を意識しなくなるような感じです。

スクリーンが大幅アップグレード

Z Fold 3ではデザインは変わらずとも、内外のディスプレイは大きくアップグレードしました。まず外側のカバースクリーンはリフレッシュレートが120Hzになり、両方のディスプレイで同じ流れるようなビジュアルが見られ、明るさも維持(最大700ニト)。色も鮮やかなままです。

でも、もっと大事なのは、内側のフレキシブルディスプレイです。Z Fold 3はサムスン最新のECO 2 OLEDパネルを搭載する最初のデバイスで、サムスンいわく電力消費が25%減少し、プラスチックの偏光レイヤーを使わないため透過率は33%向上しています。さらに環境負荷も小さいとされてます。でも、個人的に一番大きいと思うのは、Z Fold 3のスクリーンはZ Fold 2以上に鮮やかだということで、テストでも750ニトを超える輝度を示しています。

Z Fold 3を買う最大の意義は、この折りたたみ画面にあります。ゲームするとき、動画を見るとき、または友だちにミームをシェアするときにでも、Z Fold 3の巨大な高解像度2208×1768のディスプレイによって、タブレットサイズの画面をポケットに入れることができ、どんなタスクでも受け止められるんです。このディスプレイのおかげで、レストランでのQRコードのスキャンから、妻と毎晩カタンをプレイするのまで、すべての体験がより良いものになりました。

それだけじゃありません。Z Fold 3の内側スクリーンは通常のガラスディスプレイより若干柔らかいので、爪で操作しない方がいいんですが、そのためS Penがサポートされてます。つまりGalaxy Noteラインのベストな機能を、スーパーサイズなZ Foldに持ってきたわけです。このスタイラスファン歓喜のアップグレードによって、大きな画面で手描きで絵を描いたりメモをとったりがのびのびとできます。S Penのオプションもふたつあり、ひとつは50ドル(約5,500円)のS Pen Fold Edition、もうひとつは100ドル(約1万1000円)のS Pen Proで、後者は他のGalaxyデバイスでも使えます。

とりあえず僕はS Pen Fold Editionしか使っておらず、これには基本的な機能しかない(たとえばAir Actionsみたいな機能はサポートしてない)んですが、それでも必要なものはみんなカバーしていて、便利な消しゴムボタンもあるし、ペン先の種類も複数あります。S Pen Fold Editionは完全にパッシブなので、充電の必要もありません。どちらのS Penも気が利いてると思ったのは、画面を強く押しすぎるとペン先が自動で格納されるんです。これでZ Fold 3の柔らかい画面で使うのも安心です。だって画面を傷つけないために使ってるS Penで傷が付いちゃったら本末転倒ですからね。でも、僕自身はZ Fold 3でS Pen Fold Editionを使ってるとき、テストのためにわざと強く押したとき以外は、ペン先が格納されるようなことはありませんでした。

Z Fold 3のS Penサポートで問題があるとしたら、スタイラスをしまう場所が本体にはないことです。専用ケースを買うか、または耳の上にでも差すか、しなきゃいけません。

スマホ界のラグジュアリーSUV誕生:サムスンGalaxy Z Fold 3レビュー

さすがのスピード感

処理能力に関しては、Z Fold 3は最高スペックで、Qualcomm Snapdragon 888(北米では)に12GBのRAM、256GBのベースストレージ(プラス100ドルで512GBにアップグレード)を搭載してます。

ソーシャルメディアを見ててもゲームをしてても、Z Fold 3はしっかり整備したSUVのキビキビとした動き(ランボルギーニ ウルスあたりの)を見せてます。ベンチマークはどれも素晴らしく、Z Fold 3より高スコアを出せるとしたら、最新のSnapdragon 888+搭載でRAMも増やせる、Asus ROG Phone 5sみたいな最強ゲーミングスマホくらいだと思います。

ソフトウェアは改善の余地あり

Z Fold 3に関して微妙になるのは、アプリの取り扱いです。いくつも大きな改善はしてきているんですが、よく見ると雑な部分が出てきます。今までと一番違うのは、広げた状態だとサムスン製アプリの多くがタブレットバージョンになっていることで、そのUIはたしかにZ Fold 3のディスプレイによりふさわしくなっています。たとえばSamsung Internet Browserでは、タブは三本線メニューの中に隠れるのではなく、パソコンのブラウザと同じようにアプリ上部に並んで表示されます。

他のアプリでもタブレットの画面を活かすべく、サムスンはMicrosoft(マイクロソフト)やGoogle(グーグル)と協力し、OutlookやYouTubeといったアプリでカスタマイズされたインターフェースが使えるようになりました。たとえば一部のアプリで使えるFlex Modeレイアウトでは、Z Fold 3がノートPCみたいな半開きの状態でも使いやすくなりました。YouTubeの場合、画面の上半分がワイドスクリーンビューになり、下半分にコメントが表示される、といった見せ方になります。とはいえ、Galaxy Fold誕生から2年半経った今でもこういう対応アプリは少なく、折りたたみデバイスに最適化されたアプリは50本くらいしかありません。今後もっと増えることに期待です。

Z Fold 3では画面横に置けるタスクバーが追加され、マルチタスクがしやすくなっています。タスクバーをオンにするにはSamsung Labsオプションを有効化し、タスクバーを画面横にピンするよう指定しなきゃいけません。この設定方法は直感的じゃないですね。

マルチウィンドウモードにするには、タスクバーかEdgeパネルから画面のどこかにアプリアイコンをドラッグ&ドロップして、その後別のアプリも同様にするだけです。Z Fold 3みたいにフレキシブルなスマホでパソコン風のタスクバーが使えるのはすごく良いんですが、元々画面下にアプリをピンできるので、冗長な感じもしました。折りたたみスマホでは、このアプリのピンを違うことに使う、とかが良かったんじゃないかと思います。

Z Fold 3のソフトウェアには、他にもちょっとどんくさい部分がありました。たとえばアプリのペアを作るには、まずペアにしたいアプリを立ち上げて、各アプリのウィンドウサイズや配置を調整し、次にウィンドウペイン上のボタンを押して、ペアアイコン作成となります。でもこれ、パソコンでショートカットを作るときみたいに、アプリを立ち上げなくてもアプリペアを作れなきゃいけないんじゃないかと思います。ただ、このことはサムスンだけじゃなく業界全体として、ハイブリッドデバイス上でのマルチタスキングがまだまだ工事中であることの現れだと思います。何でも順風満帆とはいかないし、すぐには完成しないんですが、サムスンはモバイルでの生産性向上の道を開こうとしています。

さらに堅牢に

折りたたみスマホ、またはフレキシブルな画面一般に最大の疑問は、長期間使ったときにどれくらい堅牢性をキープできるのかということです。Z Fold 2を使っていたときもすごく考えさせられましたが、Z Fold 3では大きな懸念に全部対処したように見えます。

今までのGalaxy Foldデバイスは非防水だったんですが、Z Fold 3はIPX8認証を取得。つまり水深1.5mに30分沈めても大丈夫になりました。単に水没で壊れる心配がなくなったのもうれしいですが、折りたたみじゃないフラッグシップスマホと比べたとき、堅牢性で引けを取らなくなったのも有意義だと思います。

Z Fold 2では、デフォルトで付いてくる画面保護フィルムが剥がれる問題があったんですが、Z Fold 3はもっと強力な接着剤を使っていて、保護フィルムの素材もTPUからPTEに替わり、サムスンいわく「従来より80%強化」されました。長期的にどうなのか現時点ではわかりませんが、追い追いそれもお伝えできればと思います。

サムスンはZ Fold 3のヒンジ用に「Armor Aluminum」なるニュータイプのアルミ合金を開発し、強度を高めています。また内部にゴミが入らないようにするブラシも増やしたとのこと。

ただ、もう少し慎重に評価したいのは、何かあったときのサポートやサービス体制のことです。今回のZシリーズは、一部のパワーユーザーとかコアなスマホ好きだけじゃなく、より幅広い層の人に向けて打ち出されています。サムスンの狙い通りZ Fold 3がメインストリームになったら、サポートを必要とする人もどうしても増えてくるので、そのときにパンクせずしっかり対応できるのかどうかは見極めが必要だと思ってます。

Z Fold 2の画面保護フィルムが剥がれ始めたとき、僕はニューヨークにあるサムスンの旗艦店と、サムスン認定サービスセンター2カ所に行って直してもらおうとしました。でも、残念ながら、そのどこにも画面保護フィルムの在庫がなく、修理してもらう唯一の方法はZ Fold 2本体を修理用の宛先に郵送することだったんです。もちろんその間15日間、Z Fold 2は使えなくなりました。

人によるかもしれませんが、自分のスマホが使えなくなるのって(そしてたいていの人がそうであるように、代わりのスマホがない場合は特に)サービスが良いとは思えません。しかもZ Fold 2はすごく高いし、当時は使い始めてまだ1年も経っていなかったんです。Apple(アップル)のジーニアスバーが常々高評価を受けてるのには理由があります。アップルなら画面割れでもバッテリー交換でも、その場で即日直してもらえることが多いんです。

サムスンはSamsung Care+の展開によって、Z Fold 3ユーザーにもより手厚いサポートができると言ってます。でも、現時点では、Z Fold 3を修理したいときにどれくらい大変かは未知数です。

5つのカメラのうち4つは去年と同じ

Z Fold 3に5つ搭載されているカメラのうち4つは去年と同じハードウェア(ソフトウェアをちょっといじっただけ)なので、そこは残念でした。その4つとは、カバースクリーン上端のパンチホールのセルフィーカメラ(1000万画素)と、背面のトリプルレンズ(すべて1200万画素のメイン・超広角・2倍光学ズーム)です。

同じハードウェアとはいえ画質的には十分以上で、今でも全スマホの中で上位層に位置します。でも、僕の中には、Z Fold 3にもGalaxy S21 Ultraの1億画素超えカメラとか10倍光学ズームがあれば…と思ってしまう部分があります。そういうカメラモジュールはサイズ的にかさばったりするかもしれませんが、20万円近くするんだから、理不尽な願望じゃないはずです。ただ、発売されちゃったプロダクトのハードウェアはもうどうしようもないんで、高性能なカメラとか最高の画質といったものを求める人は、Galaxy S21 UltraかGoogle Pixel 5(またはPixel 6を待つ)を買った方がいいです。ただもちろん、これらのスマホは折りたたみじゃないので、Z Fold 3と単純比較すべきじゃないです。

画面下カメラはどれくらい使えるか

今回アップグレードされた唯一のカメラは、内向きの画面下カメラです。スマホの画面からノッチやパンチホールといった邪魔な要素を排除しようとする試みの中で、サムスンは世界初のフレキシブルディスプレイ用画面下カメラを作り出しました。

でも、第1世代テクノロジーの常として、トレードオフがあります。Z Fold 3の画面下カメラは完全に見えないわけじゃなく、隠れてるのがはっきりわかります。スマホのディスプレイに入っているピクセルとかトランジスタは、カメラのセンサーに入る光を減らしてしまうので、全体的な画質が影響を受けます。画面下カメラになるべく多くの光を取り込むべく、カメラの上に当たるディスプレイ部分のピクセル密度は、他の部分の25%くらいにまで落とされてます。なのでこの部分だけ、見た目にもはっきりと画質が粗いのがわかります。

画面下カメラで撮れる画質に関しては、全体的に低いと感じてはいるんですが、初の試みとしては上々です。ディスプレイ上の見え方という意味でも、特に白とか黒の背景にレンズ部分があると本当にはっきり見えてしまうんですが、そういう背景はたいてい映画の上下に表示される枠線だったり、通知のバーだったりします。ゲームをプレイしてるときなども、たしかにカメラの部分だけRGBのサブピクセルまで見えるんですが、カメラの位置が端の方だし、ある程度解像度があるしで、ものすごく凝視しない限りはその存在を忘れられます。それで十分なんです。

外向きのセルフィーカメラに比べて、内向きの画面下カメラの画質は明らかに落ちます。でも、Z Fold 2を使ってたときも、内向きカメラで撮る機会は片手で数えるほどしかなかったので、それは問題ないと思います。画面下カメラは、Z Fold 3の大きな画面を見ながらビデオ通話したい、みたいなときに使えるオマケ機能でしかなく、そういった場面では十分機能するカメラです。

バッテリーの減りが激しい?と思いきや

Z Fold 3のバッテリー容量は4,400mAhと、去年より小さくなってるんですが、サムスンのEco 2スクリーンのエネルギー効率はそれを埋め合わせる以上の働きをしてます。動画再生テストでは、Z Fold 3は驚異の18時間33分持ち、Pixel 5aの18時間18分の記録を超えました。ちなみにこのテストは大きい方のディスプレイで実施してるので、小さいカバースクリーンを使った場合はもっと長く持つはずです。

でも20万円かぁ…

ここで本当に考えどころです。Z Fold 3は1,800ドル(約19万8000円)と、Z Fold 2より200ドル(約2万2000円)値下がりました。微妙にお手頃なのはうれしいですが、どんなにお金があり余ってる人に対しても、Z Fold 3がマストバイだとは言いにくいです。

たしかにZ Fold 3は本当に、スマホにおけるラグジュアリーSUVです。しっかり作られていて、耐久性も高く、柔軟な機能性のおかげで、街中でのちょっとしたタスク処理から、巨大スクリーンでのコンテンツ視聴までをこなせます。特に巨大スクリーン愛好家なら、素晴らしい使い心地を味わえるはずです。それでも、この手のデバイス大好きな僕でさえ、Z Fold 3は賢い買い物だとは思ってません。ただ個人的に新しい折りたたみ画面にすごく興味はあるので、使ってみて耐久性はどうなのか、短期間と長期間とで、自分の目で確かめたいとは思います。

異才の自動車レビュワーDoug Demuro氏が、変わったプロダクトを買いたくなるのは「とにかく本当に面白いから」だと言い切ってるんですが、本当にその通りです。今買えるスマホすべての中で、Z Fold 3ほどにパワーと柔軟性を併せ持った存在はありません。SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)にちなんでスポーツ・ユーティリティ・フォンとでもいうのか、そんな何かの誕生だと思ってます。