革命の火は消えた? 2画面スマホ「Surface Duo 2」がしっくりこない理由

huaweiwearabless 18/02/2023 532

改良はされたんだけど...。

2020年に「革命の始まり」とまで言われた2画面スマホ・Surface Duo。その後継となるSurface Duo 2が米国で発売され、初代Surface Duoと同じく米GizmodoのSam Rutherford記者がレビューしてるんですが、今回の記事はだいぶトーンダウンしちゃってます。Microsoftの2画面スマホ革命はどこまで進んだのか、以下レビューをどうぞ!


折りたたみスマホが第3世代に突入しつつある一方で、画面が2つに分かれてる端末はまだまだレアです。2画面スマホはニッチであるべくしてニッチなのかもしれませんが、それでもMicrosoftは2020年、ZTEのAxon Mの後を継いでSurface Duoを発表しました。その後継となるSurface Duo 2は、外見も中身もアップグレード満載なんですが、僕自身はまだ2画面スマホそのものに賛同できずにいます。というかもう、Microsoftはあきらめたほうがいいとさえ思い始めました。

Microsoft Surface Duo 2

これは何?:Microsoftにとって第2世代の2画面スマホ

価格:1,500ドル(約17万円)※日本未発売

好きなところ:大きな画面、アップデートされたハードウェア、「グランス」での通知、細くなったベゼル、ヒンジの改善、ボタンに内蔵の指紋センサー。

好きじゃないところ:値段高すぎ、背面カメラの取って付けたような突起、防水性なし、ワイヤレス充電なし、片手だとちゃんと使えない、タッチに反応しないことがある、カメラの画質悪すぎ。

本みたいにたためるスマホ

初代Surface Duo最大の特長はそのデザインでした。独自のヒンジでつながれた超薄のガラスディスプレイには余計な角度や突起がなく、全身がミニマルなラインでできていました。まるでMicrosoftが、ハードカバー本を21世紀向けに作り直したみたいで、Surface Duoというデバイスが気に入らなくても、その美しさは否定できませんでした。

Surface Duo 2は黒とグレーの2色が用意されており、基本的なデザインは初代と同じ路線を行っています。しかし細かいところはけっこう変わっていて、前モデルの課題を解決してます。

ヒンジは小さく、ベゼルは細くなり、画面サイズをそれぞれ5.8インチ(2つ合わせると8.3インチ)と大きくしつつも、デバイス全体のサイズは変わりませんでした。指紋センサーが電源ボタンに内蔵されたので、サイドにあったくぼみはなくなってます。また本体の角がシャープすぎるという声に応えるように、Surface Duo 2のそれは丸みを帯び、持ちやすくなりました。

画面のヒンジ側のエッジが丸くなっていて、グランスバーとして時刻や通知、充電状況(電源につながってるとき)を表示してくれます。クレバーなアイデアだし、両手で開かなくても基本的な情報が見られるので便利です。

でもSurface Duo 2には、せっかくのミニマルなデザインにふさわしくない要素も加わってしまいました。背面カメラの出っ張りです。初代Surface Duoの唯一のカメラは右画面の上のインカメラだけで総スカンだったので、2代目では背面にナイスなカメラを背負わせたいという、その意図は理解できます。

ただ、モジュールをここまで大きくする必要があったのかはすごく疑問です。まるで後からあわてて貼り付けたみたいに見えるし、このモジュールのせいで画面を360度ピッタリ裏返しに開くことができません。

このカメラのせいで、1画面モードにすると画面と画面の背中合わせの間にすき間ができ、全体が厚くなるし、安定感も低くなります。しかも、浮いてる部分(画面下部の背中合わせになったところ)を押せば、強い力をかけなくても画面裏の角と角をくっつけることもできちゃいます。

革命の火は消えた? 2画面スマホ「Surface Duo 2」がしっくりこない理由

とはいえ、カメラモジュールは微妙に斜面になっており、画面を裏返したときに背面カメラと画面裏がぴったりくっつくよう配慮されています。まぁそれでもここまでボコっとしてると、他の部分がエレガントであればあるほど、カメラモジュールだけ取ってつけたように見えます。そしてこのカメラで撮れる写真がまた…その点については後で詳しく書きますね。

フラッグシップらしいパフォーマンス

初代Surface Duoの最大の失敗は、ハードウェアの貧弱さでした。SoCはQualcomm Snapdragon 855で、発売時にはもう古くなってましたね。そこでSurface Duo 2は最新のSnapdragon 888に、RAMは納得の8GB、ストレージは128GBと、しっかり増強されてきました(残念ながらmicroSDカードはサポートしてませんが)。ベンチマークでも、Samsung Galaxy S21 UltraみたいなプレミアムAndroidスマホに並ぶまでになり、GeekbenchのマルチコアCPUベンチマークでは、Pixel 6のTensorチップより若干好成績をおさめてもいます。

1892 x 1344のAMOLED画面はリフレッシュレート90Hzで、ゲームはもちろん普通のWeb閲覧でもはっきりわかるほど滑らかです。OSはまだAndroid 11(だしAndroid 12へのアップデートも時間かかりそう)ですが、マルチタスクの問題や全般的なバグも修正され、ブラッシュアップされました。

でもまだ荒削りに感じるのは、タッチへの反応の不安定さです。

Surface Duo 2をもう何週間か使いましたが、上スワイプでアプリランチャーを開くとか、下スワイプで通知トレイを開く、といった簡単なジェスチャーが、何回か試さないと反応しません。とくに使い始めの頃は無視されてるみたいでイラッとしてました。自分固有の問題じゃないことを確認すべく他の人にもタッチへの反応を試してもらったら、壊れてるんじゃないの?なんて言われることも。僕はもう慣れてきちゃいましたが、メニューの遷移とかアプリ間の切り替えも、サクサクと直感的にはいきません。

外見を犠牲にしたカメラなのに、撮れる写真が…

取って付けたようなカメラでも、ちゃんと良い写真が撮れるならガマンもできます。でもSurface Duo 2のカメラはそうじゃありません。Galaxy Z Fold 3より倍も飛び出してるカメラモジュールですが、写真のクオリティは明らかにSurface Duo 2のほうが低いです。Pixel 6と比べるともっとひどいです。

メインカメラの問題は、画像処理によるものです。

よくある日中の花の写真では、Surface Duo 2は花の部分の色の彩度が高すぎて赤くにじんでます。野球場の写真では、逆に彩度が低く生気がありません。超広角カメラの写真も、Pixel 6のそれと比べると粗く、ぼやけてます。そして暗い環境では、もっと悲しいことになります。

画像処理がいまいちであるのに加え、Duo 2にはいろんな環境に合わせた撮影モードがなく、とくにナイトモードがないのは痛いです。

一応自動のローライト機能はありますが、夜間撮影を救済するには不十分です。上の暗い野球場の写真は(周りの街灯の光はありますが)写真というより印象派の絵みたいだし、他の難しい条件での写真も暗く粒子が目立ち、2〜3年前の写真のようです。

これは厳しめに見ての評価なので、たいていは普通に使える以上のカメラだとは思います。MicrosoftはAppleやGoogle、Samsungほどモバイル写真技術に投資してないので、比べてみてパッとしないのは想定内です。でもここまで高価で、カメラモジュールもうっとうしいくらい大きいのに、ただ「使える」程度の写真しか撮れないのはどうなんでしょうか…。

バッテリーライフは十分、でもワイヤレス充電はなし

Surface Duo 2の連続使用時間は、1画面で使ったときは14時間36分と、スマホ平均の12時間36分を楽に超えましたが、2画面使うと10時間ジャストになります。それでも普通の日常使いでは、外出してから家に帰るまで持ちました。それ以上はあんまり期待しないほうがいいです。

有線充電は23ワットですが充分だとして、ワイヤレス充電がないことはちょっと気になります。フラッグシップスマホなのに…って意味では、防水じゃないことも同様に残念です。

2画面スマホに未来はあるか

数週間使ってみて、Surface Duo 2に対しては複雑な思いがあります。

マルチタスキングに関しては、2画面あることのポテンシャルは明らかです。複数アプリを同時に簡単に動かせるし、カメラやOutlookを拡張ビューで見れば、より多くの情報を手元に置けます。画面をまたいだアプリの移動とか、アプリのペアの作成とか、MicrosoftのほうがSamsungより上手に作ったな、と思う部分もいろいろあります。

ただ、Surface Duo 2はGalaxy Z Fold 3より300ドル(約3万3000円)安いとはいえ、その分Galaxy Z Fold 3のほうができることも多いんです。Galaxy Z Fold 3はバッテリーライフは長いし、写真ももっときれいに撮れるし、防水性やワイヤレス充電といったハイエンド機能もあり、しかもディスプレイ間のすき間はなく、折りたたんだときは外側にも画面がありますから。

Microsoftがやりたいことはよくわかります。デスクワークの生産性を高めてくれるデュアルモニターをスマホで再現しよう、それがSurface Duo・Duo 2の考え方です。たしかにSurface Duo 2は本やコミックも読みやすいですしね。ゲームするときのバーチャルタッチコントローラーも、かつてのXperia PlayのUIが2021年にアップデートされたかのようで最高でした。ただ、それにしても不安なところが多すぎるのです。

ビジネスユーザーにとってはカメラのクオリティってそんなに大事じゃないので、Surface Duo 2はすごくハマるはずなのに、法人向けにもっと売り込んでないのも驚きです。Microsoftはほとんどの会社と、Office 365のサブスクリプションでつながってるのに。

Surface Duo 2のデザインも心配な部分です。最薄5Gデバイスという触れ込みだし、たしかにその通りですが、スマホの薄さ戦争はもうだいぶ前に終わってます。もしワイヤレス充電とかバッテリーライフ、もっとスマートなカメラ、防水性、耐久性といった大事な機能性を削ることで薄くしてるなら、優先順位を見失ってると思います。

使える2画面スマホというアイデアは良いと今も思うんですが、Surface Duoシリーズは2画面はあきらめて、巨大な折りたたみとして継続するほうが良いんじゃないでしょうか? 純粋にハードウェアという意味で、Galaxy Z Fold 3はSurface Duo 2にできること全部をより上手にこなせてると感じるからです。どちらもスタイラスをネイティブサポートしてますが、それを使うときに、間にすき間のある画面がいいか、ひと続きの画面がいいか(真ん中に折り目があるとしても)、どっちでしょうか?

いろんな意味で、Microsoftは初代Surface Duoの問題点をつぶすのに時間をかけすぎて、Surface Duo 2の新たな魅力を考える時間がなくなってしまったように見えます。毎年目まぐるしく変わっていくガジェットの地平にあって、フラッグシップの2画面スマホをただ延命するようなゆとりは誰にもありません。でも残念ながら、Microsoftがやったのはまさにそれだったんです。