ユーザーのプライバシーとコンテンツ提供者の収益のバランスを探る新しい取り組み
Microsoftが「透明性のある広告」を提案。Canary版「Microsoft Edge」でテスト米Microsoftは12月10日(現地時間)、Canaryチャネルのプレビュー版「Microsoft Edge」で「透明性のある広告」(Transparent ads)の実験を開始したと発表した。広告で収集される個人データを明らかにし、トラッキング(行動追跡)をどこまで許容するかをユーザー側で柔軟にコントロールできるようにする新しい仕組みだ。
近年、オンライン広告でパーソナライズのための過剰なトラッキングが問題となり、プライバシーを保護するため多くのWebブラウザーでトラッカーをブロックする機能が搭載されている(「Edge」は基本・バランス・厳重の3段階が選べるトラッキングの防止機能を搭載)。
「Edge」は基本・バランス・厳重の3段階が選べるトラッキングの防止機能を搭載しかし、それぞれのユーザーの興味や嗜好にあったパーソナライズ広告は、まったく無関係な・低品質な広告ばかりが表示されるより有用なことも多い。また、コンテンツのクリエイターが労苦に見合った収益を得るためにも、効果的な広告は不可欠だ。結局のところ現在のWebコンテンツは、アカウントを作って有料のサブスクリプションを購入するか、広告の代わりに無料で楽しむかのいずれでしかない。そして、後者の課題はいかにユーザーのプライバシーとコンテンツ提供者の収益をバランスさせるかにかかっている。
ユーザーのプライバシーとコンテンツ提供者の収益のバランスを探る取り組みとしてはGoogleが「Chrome」でテストしている「プライバシー サンドボックス」(Privacy Sandbox)と「Federated Learning of Cohorts」(FLoC)が知られているが、ユーザーの閲覧履歴を機械学習で分析し、広告主に提供するというアプローチはあまり理解が進んでおらず、反対も根強い。
Googleが「Chrome」でテストしている「プライバシー サンドボックス」一方、Microsoftが今回発表した「透明性のある広告」アプローチは、まず広告プロバイダーにプライバシー基準を守るように要請する。これに準拠しない広告のトラッキングは、トラッキングの防止機能の「バランス」モード(既定)で排除される。既定の「Edge」設定でパーソナライズ広告を表示したければ、「お行儀のよい」広告でなければならないというわけだ。
「透明性のある広告」アプローチに準拠しない広告プロバイダーはGoogleも含めて既定でトラッキングをブロック。「お行儀のよい」広告だけにトラッキングを許す「透明性のある広告」に準拠した広告プロバイダーは、指定されたメタ情報をWebブラウザーに提供する。これにより、「Edge」はアドレスバーのパネルからユーザーに以下の情報を提供できる。
たとえば、「地元の知らないショップが掲出する広告は歓迎なので居住地は知らせてもよいが、育毛剤の広告ばかり表示されるのは嫌なので年齢と性別は知らせたくない」といった場合、居住地の推定は許可するが、そのほかは拒否するといった使い方が可能になるだろう。もちろん、「透明性のある広告」を含めたトラッキングの禁止も行える。
「Edge」のアドレスバーからアクセスできるパネルで広告が何をしているのかをわかりやすく表示この「透明性のある広告」は、最新版のCanaryビルドでテスト可能。デモページを開くと「Edge」のアドレスバーに[このページの広告]アイコンが現れるのでそれをクリックすると、当該ページに掲載されている「透明性のある広告」の一覧がリストアップされる。アイテムをクリックして広告の位置へスクロールしたり、トラッキングをオプトアウトするためのWebページ(仮設)へアクセスしたりすることが可能だ。
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