グーグルがスマートフォンを使った仮想現実(VR)の世界をより楽しく、よりインタラクティブなものに変えようとしている。鍵となるのは、リモコンだ。
同社が発表した新たなVRヘッドセット「デイドリーム・ビュー」は79ドル(約8400円)で販売され、片手に収まるサイズの専用リモコンが付属する。リモコンには操作ボタンやホームボタン、利用者の動きを認識するセンサー、音量ボタン、さらにメニューをスクロールするのに使えるタッチパッド機能が搭載されている。
筆者がヘッドセットを装着し「ワンダーグレード」というゲームを遊んでみたところ、リモコンはゲーム内ではゴルフのパターや消火ホースとして使えた。グーグルの「ストリートビュー」のアプリを使う際も、視界に広がる風景の中で移動するにはリモコンで指示を出せた。「メコラマ」というパズルゲームでもリモコンが活躍し、画面に現れるロボットに指示を出す道具となった。
VRヘッドセットとリモコンを組み合わせる発想はとてもシンプルでありながら、これまでのモバイル系VRには見られなかったことだ。グーグルの別のVRヘッドセット「グーグルカードボード」にもボタンがひとつあったが、チープな本体の内側に付いており、完成度が低かった。サムスン電子の「ギアVR」は横の部分にタッチパネルがあるが、使い勝手が悪く直感的に使えない。しかしデイドリーム・ビューのリモコンは初めて使った感じがしないほど操作は快適だった。
競合製品と同様、デイドリーム・ビューの性能や画質は利用するスマートフォンによって変化する。現時点で対応しているのは、基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載したグーグルの新型スマートフォン「ピクセル(Pixel)」と「ピクセルXL」のみ。両機種はアップルの「iPhone(アイフォーン)」よりもピクセル密度がはるかに高いため、とてもスムーズな映像を見ることができる。将来的には、デイドリーム・ビューの本体とリモコンはサムスン、ファーウェイ(華為技術)、LG電子などの製品でも使えるようになるという。
高価なVRヘッドセットにはかなわないが
デイドリーム・ビューはプラスチックと布でできているため柔らかい。またサムスンのギアVRと比較して重さも軽く、装着感も良い。実際に顔と触れる部分は取り外せるため、洗うことも可能だ。リモコンを利用しない時は本体に収納できる作りになっていて、とても便利だと感じた。
デイドリーム・ビューはわずか80ドルで、持ち運びも簡単だ。本体はケーブルとつながっていないので、使用中に気になることもない。
ただ、いくらリモコンが素晴らしいとは言っても、パソコンなどに接続して使う高価なVRヘッドセットとは別物であることは明らかだ。デイドリーム・ビューは台湾の宏達国際電子(HTC)の「Vive(バイブ)」(799ドル)やソニーの「プレイステーションVR(PSVR)」(400ドル)の精巧さには遠く及ばない。
さらにデイドリーム・ビューでアプリやゲームをすると、バッテリーの減りがかなり速いのも欠点のひとつだ。装着感もいいが、動きが必要となるゲームを楽しんでいる時などは本体が頭からずり落ちそうになることもあった。ギアVRは取り外し可能な伸縮性ストラップで頭に固定できるが、デイドリーム・ビューにそれがない。
グーグルはデイドリーム・ビューで利用できるアプリやゲームを年内に50種類ほど投入するとし、それらはリモコンを使って操作できるという。新しい形のVRヘッドセットとしては悪くない本数だが、サムスンのギアVRに150以上のアプリやゲームがあることを考えると少し寂しい。さらに言えば、デイドリーム・ビューはiPhoneに対応していないことも残念だ。
しかしこれら欠点があるとはいえ、デイドリーム・ビューはモバイル型VRヘッドセットとしては、今のところ最高の製品だ。